「なぜ自分ばかり」となる前に、きょうだいで介護分担を話し合う
立場は同じでも親との関係はそれぞれ
親の入院・介護では、きょうだいがいる場合は、その連携が必要となります。しかし、きょうだいとはいえ、家族構成も経済状況も異なります。また、親のごく身近なところで暮らしている子もいれば、遠距離、しかも国外に暮らしている子もいるかもしれません。
法律上は長男、次男、長女、次女の区別なく、皆同じように親を扶養する義務を負っています。同居の子と別居の子がいる場合も、同居の子だけが親を看なければいけないわけではありません。早い段階で役割分担できるのが理想的です。
しかし、現実はきょうだいとはいえ、親に対する気持ちには温度差があり、前向きにかかわろうとする者ばかりではありません。そうなると、深くかかわる子は「なぜ、自分ばかり……」という思いを抱くことに。不満を募らせる前に、話し合う時間を確保しましょう。
きょうだいに介護の契約や治療法を相談するべき理由
介護といえば、入浴、排せつ、食事の介助など身体的なサポートを思い浮かべがちです。手を出さないきょうだいは、そうしたことが不得手か、時間の確保が難しいのかもしれません。
しかし、今後家族が行わなければいけないことは、福祉サービスの情報収集や資金計画、専門職との連絡・調整など、直接介護をする以外にもたくさんあります。つまり、マネジメントです。
通信の発達した現代社会では、サービスの情報収集などは、ネットを使えば海外からでも行えます。実際、海外在住で、日本国内に暮らす親の遠距離介護をしている人もいます。ケアマネジャーとは、メールでやり取りするケースが多いようです。
もし、自分がキーパーソンになるなら、きょうだいには伝えておくことが大切です。サービスを利用するとなれば「契約」も必要となります。病院では治療法の「決断」を迫られるでしょう。
こうした「契約」「決断」を事後報告すると、他のきょうだいとしては気分を害し、「自分の出る幕はない」という気持ちになるようです。事前に相談することを心がけましょう。
とはいえ、どうしてもかかわってこないきょうだいもいます。親との確執を抱えているなど、当事者にしかわからない事情があるのかもしれません。深追いすると疲弊します。その場合は、「最初からいないもの」と考えると気持ちが楽になる、としばしば聞きます。
太田差惠子
介護・暮らしジャーナリスト


