年を重ねた親に記憶力の低下や認知症の兆候が表れると、子どもの不安は募るもの。遠方に暮らしていて、近くでサポートすることもできないと悩む人は少なくありません。本記事では、介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版』(翔泳社)より一部を抜粋し、そんなときに知っておくと安心な支援サービスについて解説します。
遠方に住む親が、お金の管理をすることが難しくなってきたら?
軽度の認知症などで日々の入出金などが心配に…
軽度の認知症などによって、公共料金の支払いや、通帳の管理などが心配になることがあります。
けれども、ホームヘルプサービスではお金の管理を依頼することはできません。親と同居や近居ならサポートできますが、遠距離の場合、悩ましい問題となりがちです。毎月、一定額の現金(小遣い)を親に渡すために、実家に通うという人もいます。
そのような心配を軽減できるサービスに「日常生活自立支援事業」があります。窓口は親の地元の社会福祉協議会です。
このサービスを利用すれば、「生活支援員」が定期的に親の家を訪問し、介護保険サービスの契約や支払い手続きのサポートをしてくれます。預金通帳や銀行印などを預かり、入出金の代行も。入院時や、高齢者施設に入居した場合にも使えます。
利用にあたっては、親本人にこのサービスを利用する意思があり、契約内容をある程度理解できることが必要です。相談は無料ですが、手続きや金銭管理などのサービスを利用する際には、訪問1回あたり1,200円程度の利用料がかかります。
悪質商法や詐欺被害を未然に防ぐには?
親の判断力が低下してくると、悪徳業者からの訪問販売の被害や振り込め詐欺などに狙われる頻度が上がり、心配なものです。日常生活自立支援事業の生活支援員の訪問によりお金の動きがわかり、被害を未然に防げたという話も聞きます。
なお、親が何らかの不要な契約をした場合は、クーリングオフで解約できるケースもあります。消費生活センターに相談しましょう。
太田差惠子 介護・暮らしジャーナリスト
介護・暮らしジャーナリスト
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに、「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」などの視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)資格を持つ。「Yahoo!ニュースエキスパート」のオーサーなどでも活躍中。
1996~2023年の27年間、遠距離介護の子世代をサポートするNPO法人「パオッコ」を運営。2012年、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了(社会デザイン学修士)。主な著書に、『高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本第3版』『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(いずれも翔泳社)、『親の介護で自滅しない選択』(日経BP)、『知っトク介護弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門第2版』(共著、KADOKAWA)などがある。
●太田差惠子のワークライフバランス
https://www.ota-saeko.com/
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと