介護現場の“虐待増加”を不安視する声…「この老人ホームは大丈夫?」親を安心して預けられる施設の見極め方【介護ジャーナリストが解説】

介護現場の“虐待増加”を不安視する声…「この老人ホームは大丈夫?」親を安心して預けられる施設の見極め方【介護ジャーナリストが解説】

近年増加傾向にある、介護現場での高齢者虐待。連日の報道を受け、なかなか施設利用に踏み切れない在宅介護者もいます。しかし、そのままでは介護負担は増えるばかりです。本記事では、介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版』(翔泳社)より一部を抜粋し、介護施設選びのポイントついて解説します。

ひどい施設があるという報道を見て不安…

届け出をしている施設の方が安心 

[図表1]養介護施設従事者等による虐待(介護老人福祉施設、居宅サービス事業等の業務に従事する者)

有料老人ホームを運営するには、設備や広さなど法律で基準が定められており、都道府県へ届けを行う必要があります。しかし、必要な基準を満たさずに無届けで運営する施設も存在します(2024年度の無届けの有料老人ホームは全国で584か所(厚生労働省))。

 

事故が発生したり、虐待していても行政が気づきにくいといった構造です。実際、ベッドに身体を固定した「身体拘束」状態の高齢者が多数で暮らす都内のマンションが問題視された報道もありました。 

 

制度に当てはめることが難しいために無届けとなっている施設もあるようですが、善し悪しの見極めは難しいでしょう。第三者の監視の目のある届け出を行っている施設を選ぶほうが安心だと思います。 

 

ただし、届け出ている施設でも、高齢者虐待などの問題は起きています。見学時には、スタッフと入居者の様子を観察しましょう。親が入居した後ものぞきに行き、気になることがあったら、遠慮しないで施設長などに聞くようにしたいものです。

 

「お泊まりデイ」も内容を確認 

介護保険法に基づくデイサービスに加え、その利用者を対象に、夜間に介護保険適用外の宿泊サービスを提供する「お泊まりデイ」という事業形態があります(「宿泊サービス」と呼ぶところも)。都道府県(または市区町村)への届け出義務があります。 

 

利用料は個別に異なり、1泊2食付きで3000~8000円程度と幅があります。デイサービス利用者を取り込むための営業ツールとして行われている面もあります。利用を検討する場合は、内容をしっかり確認しましょう。

 

都道府県や自治体では、ガイドラインを設けて人員などの指定基準を定めています。例えば東京都の場合、通所介護利用定員の2分の1以下かつ9人以下、個室以外の宿泊室の定員は、1室あたり定員4人以下など。

 

介護サービス全般にいえることですが、ケアに人件費がかかるのは当然なのに、あまりに安価なところは注意が必要です。利用する可能性があるなら、ケアマネジャーに相談の上、地域にどのようなサービスや施設があるのか確認しておくといいでしょう。

入居後は家族参加の行事でスタッフとコミュニケーション

親が施設に入居した場合、親の生活がより快適なものとなるように、面会に行く際などを利用してスタッフと良いコミュニケーションを確保したいものです。 

 

多くの施設では「運営懇談会」が開かれ、入居者の現状、課題、施設での取り組みなどが報告されます。もちろん、入居者や家族が意見を言うことも。また、入居者の家族で「家族会」を組織して懇談会を開くところもあります。 

 

その他、クリスマス会や七夕祭などの行事に家族を招待する施設もあります。開催回数や内容は施設ごとに違いますが、開催通知が届いたらなるべく参加しましょう。親のモチベーションアップにもつながりますし、スタッフと交流する貴重な機会となります。

 

その施設で生活する入居者の家族とも知り合えるチャンスです。悩みや心配ごとがあれば、共有することもできるでしょう。

 

太田差惠子
介護・暮らしジャーナリスト

※本連載は、太田差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版』(翔泳社)より一部を抜粋し、解説します。

親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版

親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版

太田 差惠子

翔泳社

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