人手不足や物価高が経営を直撃、小規模企業ほど影響受けやすく
東京商工リサーチによると、資本金1,000万円未満の企業や負債額1億円未満の倒産がいずれも7割を超え、小規模企業ほど影響を受けやすいことが判明した。一方で、負債総額は前年同期比49.6%減の6,927億円にとどまり、件数の増加に比べ総額は抑制されている。
日本総合研究所客員研究員の山田久氏は「総じてコスト高の価格転嫁が難しく、人手不足で業容を縮小せざるを得ないなか、賃料など固定費負担に耐えられない状況が生まれている。さらに経営者の高齢化に伴い、後継者が見つからず廃業を決断するケースも増えている」と分析する。
倒産原因、際立つのは「人手不足による経営圧迫」
倒産原因のなかで、人手不足による経営圧迫が際立っている。人手不足を理由とする倒産は202件(前年同期151件)で、2013年度以降の上半期として最多を記録した。内訳は、人件費高騰72件、求人難66件、従業員退職64件である。
山田氏は「労働集約的なサービス業や飲食店、建設業など、人手依存度の高い業種で影響が大きい」と指摘。
中小企業は賃上げや福利厚生改善の余力が乏しく、人手不足の影響を受けやすい。また、少子高齢化や人口減少により、労働力確保そのものが困難であり、採用コストの増加も経営者の課題となっている。
原材料費・エネルギーコスト上昇も、中小企業に大きな影響
物価高を要因とする倒産は3年連続で前年を上回り、369件(前年同期355件)に達した。原材料費やエネルギーコストの上昇が、中小企業に大きな影響を与えている。
「世界的な保護貿易の潮流や地球温暖化による一次農産物供給の不安定化を勘案すると、コスト増が倒産増加要因となる状態は続くだろう。企業はコスト削減よりも売上増を目指す戦略に抜本的に転換しなければ生き残れない」(山田氏)
とくに飲食業や小売業、建設業では、原材料費や人件費上昇の影響が価格に反映されにくく、利益率低下や赤字受注の継続が経営を圧迫している。
理由は構造的要因、高水準の倒産が続く可能性高い
全国の倒産件数は上半期として4年連続で増加しており、件数の増加は景気全体の大規模損失を意味するわけではない。むしろ、小規模企業の脆弱性や経営力の差が反映された結果であり、大企業の倒産は依然少数にとどまる。
山田氏は「各種コスト高が常態化し、人口減少による国内競争は激化している。これらは構造的要因であり、高水準の倒産が続く可能性が高い」とも指摘する。
また、人口減少、デジタル化、産業構造転換といった長期的要因が企業の生存環境に大きく影響しているという。
今回の統計が示す教訓は、「変化への迅速な対応」と「経営基盤の強化」である。人手不足や物価高への対応として、賃上げや福利厚生の充実、価格戦略の見直し、生産性向上への投資が不可欠である。
「人口減少は労働力不足のみならず、国内市場縮小による競争激化を招く。デジタル化に対応できる企業は成長し、対応できない企業はシェアを奪われ倒産が増加する」(山田氏)
倒産件数の増加は小規模企業の脆弱性を反映した結果であることから、経営者は先手を打って戦略を講じることが、企業存続の鍵となるだろう。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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