医師が患者への説明を「あえて控えるケース」3つ…納得できる診療を受けるために、患者が心掛けるべきこと【医師が解説】

医師が患者への説明を「あえて控えるケース」3つ…納得できる診療を受けるために、患者が心掛けるべきこと【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

常に多くの患者さんが診療を待つ医療現場では、的確な診察を効率よく行うことが必要です。しかし、かみ合わない会話が続くとき、医師は「伝わらない」リスクを回避するため、必要最小限の情報だけを伝えて診察を終える場合があります。このような「わかりあえない」事態を回避するには、どのような点に留意して診察に臨めばいいのでしょうか。医師が解説します。

会話がかみ合わないとき、医師は説明をあきらめる

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医師は、本来すべての患者に対して丁寧に説明を行い、十分な理解を得たうえで診療を進めたいと考えています。診断や治療方針に関する情報をわかりやすく伝え、同意を得ることは医療における基本であり、「インフォームド・コンセント」と呼ばれています。

 

しかし現実の診察室では、患者との会話がどうしてもかみ合わず、医師が「これ以上説明しても伝わらない」と判断する場面が少なくありません。そのとき、医師はあえて深く説明することを断念し、必要最小限の情報だけを伝えて診察を終える場合があります。その場での説明をあきらめた状態です。

 

医師のこうした対応は、患者にとって「冷たい」「不親切」と感じられるかもしれません。しかしその背景にあるのは感情的な拒絶ではなく、むしろ後に控える多くの患者を公平に診療していくための、やむを得ない判断なのです。医師はその瞬間、「この場でこれ以上の対話を続けても状況を好転させることは難しい」と判断し、限られた時間の中で最善を尽くそうとしているのです。

 

診察室の中で医師は、現在起こっている病気の説明、これから行おうとする治療の方針と他の治療の選択肢、処方薬の説明、今後の注意点などを、限られた時間の中でできる限り正確に伝えようとしています。

 

たとえば副鼻腔炎と診断した場合、病気の概要と現在の状態、考えられる原因、処方薬の内容や使い方、さらにCTなどの詳しい検査の必要性などについて、順序立てて説明していきます。

 

このような説明は、医師と患者がその内容を十分に共有できれば治療は円滑に進み、より良い経過につながります。

 

しかし、すべての患者が説明を十分に受け止めてくれるとは限りません。医師が丁寧に説明を試みても、話がかみ合わず、途中で途切れてしまう場面も少なくありません。

話を遮る/自身の知識や体験にこだわる/質問に答えない

代表的な例を挙げます。

 

①医師の説明の途中で患者が話を遮る

医師が「これは鼻の奥の炎症が…」と説明している最中に、「子どもの幼稚園で風邪が流行っているんです」と割り込まれることがあります。患者にとっては不安や心配からくる自然な反応ですが、医師の思考は中断され、話の流れが崩れてしまいます。

 

②自分の知識や体験にこだわり、とらわれてしまう

「でもテレビでは○○○と言っていました」「ネットで推奨されていた○○○という薬を処方してください」といったように、医師の説明よりも持参した情報を優先する姿勢です。こうしたやり取りが繰り返されると、対話は議論のようになり、医師は説明を続けにくくなります。

 

③医師の質問に答えが返ってこない

「いつから耳の痛みがありますか?」と尋ねても、「痛みだけでなく、聞こえも悪いのです」といった返答を返された場合、診察の進行は乱れ、医師の判断に混乱を生じることがあります。

 

さらに、診察の初めに重要な情報を伝えず、医師の一通りの説明が終わったあとで「実はここに来る前に別の医者にかかって同じことをいわれたのですが、その薬を飲んでも治りませんでした」と話す場合もあります。このような場合、医師は前医を再受診してその旨を伝えるよう勧めたり、別の治療を提案したりしますが、次の処方薬も効果が出ない可能性をあらかじめ伝えたうえで、最終的な判断を患者に委ねる傾向があります。

 

こうしたすれ違いが続くと、医師は「この方には説明しても伝わらないかもしれない」と感じるようになります。誤解されるリスクを避けるために、あえて説明を控える――これが「説明をあきらめる」という現象の正体です。

 

たとえば、咳や喉の痛みを訴える患者に対し、病気の説明とそれに対する処方薬の説明を終えた後で、「抗生物質は出さなくても大丈夫ですか」と尋ねられることがあります。ここで医師が抗生物質を処方する際のデメリットである副作用や薬剤耐性菌の問題を丁寧に説明しても、それが患者の期待に合わなければ「融通の利かない医師」と受け取られてしまうことがあります。さらに、インターネット上に否定的な書き込みをされることもあります。

 

このような経験が重なると、医師は次回から詳細な説明を避け、最小限の情報だけを伝えて診察を終えたり、処方のデメリットを説明した旨をカルテに記載したうえで、患者の希望する処方を行う場合もあります。

 

これは医師の防衛反応でもあります。診療の効率を守り、誤解によるトラブルを避けるための、一種の「合理的判断」なのです。

 

しかし説明が省略されると、患者の不安はむしろ増幅します。「早く帰らされた」「大事なことを見落としているのではないか」といった疑念が芽生え、医師への信頼は低下します。その結果、患者は別の医療機関を受診し、また同じようなすれ違いを繰り返します。これは医療現場でしばしば見られる悪循環です。

 

医師が「伝わらない」と感じると、丁寧に説明しようという意欲を失います。患者は「なぜ話してくれないのか」と感じ、両者の距離はさらに広がっていくのです。

より良い診療のために患者ができること

では、患者側には何ができるでしょうか。

 

まず第一に、医師の話を最後まで聴くことです。不安や疑問があっても、説明が終わるまでは割り込まない。理解できたときにはうなずき、適切な相づちで意思表示をする。それだけで、医師は考えを整理して伝えきることができ、続く質問も落ち着いて受け止められる態勢が整います。

 

第二に、自分の考えを伝えるタイミングを選ぶことです。「こういう情報を見たのですが、先生はどう思われますか」などの質問は、説明を終えたあとに尋ねるという配慮をするだけで、対話は格段にスムーズになります。

 

第三に、わからないときは正直に伝えること。「よく理解できなかったので、もう一度お願いします」と言えば、医師は説明の方法を変えられます。「わからない」と言わずに黙ってしまうと、医師は「理解された」と誤解して次に進んでしまうことがあります。

 

こうした姿勢の積み重ねが、医師に「伝わっている」という安心感を与えます。安心感が生まれると、医師はさらに丁寧に説明しようとします。逆に、無表情で反応が乏しいと、医師は通り一遍の説明を短く切り上げてしまいます。医師の説明量は患者の反応に左右されるのです。

まとめ

医療現場では、信頼の積み重ねが説明の深さを決めていきます。誠実に情報を伝え、医師の指示を理解しようと努める患者ほど、説明の内容は豊かになります。

 

説明を受けても理解できなかったときは、わからなかった点を素直に伝えましょう。「それって○○○ですか」といったイエス・ノーで答えられる形の質問は避けましょう。

 

医療におけるコミュニケーションは、日常会話ではなく「協働作業」です。目的は、最善の診断と治療を行うことにあります。互いに同じ方向を向き、目的を共有する関係を築くことが、良い医療を支える基盤です。

 

患者の工夫は医療の質を左右します。聞きたいことはあらかじめ整理しておく。医師の質問には一問一答形式で、問われていることに簡潔に答える。医師の説明を遮らず聴く――この三点だけで、診療は驚くほど変わります。

 

良い説明は、良い聴き方と良い質問から生まれます。医師のより良い説明を引き出すためには、患者が「聴く姿勢」を整えることが不可欠です。

 

どうすれば医師が説明しやすいか――その視点を持つこと。それが、良い医療を引き寄せる第一歩となります。

 

医師の思考を止めないこと。説明を途中で断たせないこと。そして、もう一度説明したくなるような患者であること。その積み重ねが、あなた自身の患者力を高め、診療の質を根本から変えていきます。

 

名医は、患者によってつくられる。医師が力を発揮できるように、患者が寄り添い、支え、共に考える――この関係性こそが、現代医療における最も実践的な「患者力」なのです。

 

 

宮澤 哲夫

みやざわ耳鼻咽喉科 院長

医師・薬剤師

 

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