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患者が無意識のうちに医師の「話の腰を折る」と…
診察室は、医師と患者が協力して1つの作業を進める場所です。
医師が行うとしていることは、限られた時間の中で症状の原因を見極め、必要な検査を選択し、適切な治療方針を導き出すことです。つまり診察とは、言葉による正確な情報の共有、適切な診察、得られた結果の十分な検討、そして結論に基づく治療方針の決定と説明による共有という一連の流れで成り立っています。この過程は、高い集中力と互いの協力を必要とする、医師と患者の共同作業です。
しかし、この流れが思わぬところで途切れてしまうことがあります。そのひとつが、患者が無意識のうちに医師の「話の腰を折る」行為です。ここで言う「腰を折る」とは、単に会話を遮るだけでなく、医師が診断のために組み立てている思考や情報整理の過程を中断させてしまう言動を指します。そのような言動は医師の思考を妨げ、診療の精度や効率に影響を及ぼすことにつながります。
医師は、緊急度や重要度を考慮しつつ次の質問を準備している
診察中の質問は、思いつきで行われているわけではありません。たとえば耳の聞こえにくさを訴える患者に対して、医師は「いつからか」「片耳か両耳か」「耳鳴りや痛みの有無」「きっかけとなる出来事があったか」といったことを尋ねていきます。これらの質問は、疾患の絞り込みと診断のために体系的に順序立てられて行われます。
医師は患者の答えを聞きながら、同時に考えられる疾患の候補を並べ、緊急度や重要度を考慮しつつ次の質問を準備しています。この思考は連続的なものです。
しかし、その途中にまったく別の話題が挟まると、組み立てられた思考の流れが一時的に途切れてしまいます。それでも医師は患者の信頼を損なわないために耳を傾けようとしますが、そのたびに思考の再構築が必要となり、時間と集中力が削がれていきます。もちろん、そこから新しい情報が得られることもありますが、ほとんどの場合、重要な内容は本来の質問の流れの中で確認されます。
話題が逸れれば、診断の精度低下・処方ミスにつながる恐れも
耳鼻咽喉科の対象とする疾患は多岐にわたります。そして、複数の症状を同時に自覚して来院する患者も少なくありません。そのため、診察室での患者の説明が複数の症状の間を行き来し、話題が逸れやすい傾向があります。
たとえば、「咳」で受診した患者が診察の終わり際に「そういえば耳もかゆくて、1ヵ月前に耳掃除をしてからなんです…」と話し始める。あるいは「のどの痛み」で来院した患者が、終了間際に「めまいもあるんですけど、大丈夫ですか?」と唐突に尋ねる。また、兄弟で受診した場合、2人目を診察している最中に母親から、「やっぱりさっき診てもらったお兄ちゃんの耳掃除もお願いします」と追加依頼をされることもあります。
これらは患者にとって、思い出したことをその場で伝えたいという自然な気持ちの表れであり、もちろんその気持ちは十分に理解できます。しかし、このようなタイミングでの問いかけは医師の集中力をそぎ、診断の精度低下や処方ミスなどにつながるおそれがあるのです。
診察室で訪れる「医師の沈黙」のワケ
電子カルテが普及し始めた頃、「医師はパソコンばかり見て患者を診ない」という声が多く聞かれました。実際に、電子カルテ入力中の医師は、得られた情報を正確にまとめ、誤りなく記録することに集中しています。このタイミングで話しかけられたり、質問されて回答を求められたりすると書きかけの内容を失念したり、記載ミスにつながるおそれがあるため、どうしても入力に集中せざるを得ないのです。
また、診察室でおとずれる医師の沈黙も、患者にとって居心地の悪い時間に感じられるかもしれません。しかしその沈黙は、医師が情報を整理し、病気の可能性を検討し、治療方針を決定している大切な時間です。この瞬間に会話が割り込むと、思考の連続性が断たれ、診療の精度が低下する原因となります。
「何を話すか」だけでなく、「いつ話すか」も重要に
診療の流れを妨げないためには、「何を話すか」だけでなく、「いつ話すか」も重要です。
話をきちんと伝えるために、気になっている症状を診察の冒頭でまとめて伝えることも重要です。特に複数の症状がある場合は、「今日は喉の痛みとめまいを診てもらいたくて来ました」というように、初めに整理して伝えると、診察が非常に進めやすくなります。
診察が始まってから追加で話したいことが出てきた場合は、次のようなタイミングで伝えると話がスムーズに伝わります。
●医師の質問が一段落し、間ができたとき
●カルテ入力が終わったとき
●「他に何かありますか?」と尋ねられたとき
一方、次のようなタイミングでの問いかけは診察の流れを中断し、診断の精度を損なう原因になります。
●検査や処置の最中(聴診しているとき、耳や鼻の診察をしているときなど)
●医師が説明している途中で、話が完結していないとき
●カルテ入力や薬剤量の計算など、集中して作業を行っているとき
こうした配慮は、必要な情報を的確に伝え、診察をよりスムーズかつ質の高いものにするための大きな助けとなります。
必要なことを適切なタイミングで伝える=「患者力」
診察室でのやり取りは、一方的な情報提供ではなく、医師と患者が共同で医療をつくる過程です。話の腰を折らず、質問に正確に答え、必要なことを適切なタイミングで伝えることは、患者にできるもっとも実践的な“患者力”の一つです。
「よかれと思って」の一言が医師の判断を鈍らせることもあれば、一拍置いて話すことで診断の精度が高まることもあります。タイミングを意識した言葉のやり取りは、限られた時間を最大限に生かし、最終的には患者自身の利益として返ってきます。
話し方と話すタイミングを少し見直すだけで、診療の質は大きく変わります。それは今日から誰でも始められる、最も身近で確実な“診療の質を高める方法”です
宮澤 哲夫
みやざわ耳鼻咽喉科 院長
医師・薬剤師
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