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外来診療における「精度」と「効率」
外来診療は限られた時間のなかで、的確な診断と適切な処置を行うことが求められる場です。この外来診察で医師は日々、一期一会の機会と真剣に向かい合い、常に最適な判断を下す努力をしています。
診察室にはさまざまな患者が訪れます。たとえば「聞こえづらい」という症状ひとつでも、その背景には加齢性難聴や滲出性中耳炎のように経過の長いもの、突発性難聴のように迅速な対応をしないと障害を残してしまうもの、耳垢塞栓のように適切な処置を行えば治療が完結するもの、あるいは白血病や悪性腫瘍などのように進行すれば命にかかるものなど、さまざまな疾患の可能性が考えられます。
そして1人ひとりに必要な診療の時間はすべての均一ではありません。もちろんすべての患者の話に十分耳を傾けて、時間をかければ質の高い診療につながります。
しかし、診察に多くの時間をかければ、あとに続く人の待ち時間がのびていきます。そして、遅い時間にしか来院できない人には大きな負担を強いてしまいます。
一方、完全予約制を導入して機械的に時間を区切って診察を行うと、診療の内容は画一的になり、1回の診察でできることも制限されてしまいます。
限られた診察時間のなかでミスを防ぎ最善の判断を下すために、医師は1人ひとりの背景や症状の違いに思いを巡らせて、常に最適な対応を考えています。この思いはどれほど忙しい医師であっても変わりません。
医療の現場では、たった1度の判断の誤りが、患者の将来の生活の質や、時に命にまで影響を与えることがあります。それは外来診療でも例外ではありません。実際の臨床現場で遭遇する患者の症状は医学の教科書に載っているような典型的なものばかりではありません。さまざまな要素が絡み合いさまざまな様相を呈していることが少なくないのです。
さらに、その表し方も1人ひとり皆違います。こうした状況のなかで、それらのすべてに注意を払い、限られた条件のなかで最善の選択を行い続けることは、診察する医師にとって決して容易な作業ではありません。
医師だけでは成り立たない外来診療
患者が語る話の内容が診断の出発点の重要な手がかりになります。症状の性質、部位、発症の時期とこれまでの経過、日常生活への影響など、医師は限られた時間のなかで多くの要素を問診によって確認していきます。
しかし現実の診察室での会話はいつもスムーズに進むとは限りません。医師の質問に対して直接回答するのではなく、自分なりの解釈を加えて脚色してしまう人、背景の説明や職場の悩みが話の中心になったり、自身が推測した病名やその解説を話そうとする人もいます。
診察を受ける立場からすれば、さまざまな情報を余すところなく伝え、より精度の高い判断を求めるのは当然のことです。
一方で医療従事者の側は、必要な情報を確実に得るために、系統的に質問を重ねていこうとします。そのため、質問に対する明確な回答ではなく、思いついたことを順不同に話されてしまうと、必要な情報を得るまでに多くの時間を費やし、思考の流れも途切れてしまいます。その結果、判断の組み立てが寸断されて、診断の精度が低下することにもつながってしまいます。
このような、小さな会話の行き違いが繰り返されることで、重要な情報の聞き落としや、最終的な診断ミスといった重大な問題に発展する可能性もあるのです。
医師が診察を受けるすべての人に対して同じ集中力を保ち続けるには、医師自身が診察のリズムを整え、思考の流れを維持するための環境づくりを行うことが欠かせません。そして多くの医師は、それぞれ集中力を保ち続けるための自分なりの方法を持っています。
しかし、安全で質の高い診療を実現するには、医師の努力だけでは限界があります。情報が正確に共有されるためには、患者自身が状態をあらかじめ整理し、明確に伝えようとする姿勢が欠かせません。
質の高い医療を支える「患者の技術」
患者が症状を整理し、医師の質問に的確に応じることは、医療の質を高めるうえで非常に重要な要素です。要点を押さえて話すことができる患者との診療は、必要な情報を効率よく把握できてテンポよく進みます。そして、正確な診断と迅速な治療につながります。
反対に、患者の話がまとまらず、要点が不明瞭だったり、質問に正面から答えず、自分の思いを語ってしまうといった場合、診療のテンポは崩れ、情報の聞き漏らしが生じやすくなります。つまり、限られた時間のなかで質の高い医療を実現するためには、医師の技術と並んで、患者側の伝える力、すなわち「患者力」が大きな役割を果たすのです。
医師は患者の話を聞きたくないわけではありません。むしろ、できるだけ多くの情報を得て状況を理解したいと考えています。しかし、現実の診察時間は限られています。その制約のなかで正確な判断を行うために、必要な情報が簡潔に伝えられることが望まれるのです。
医師が患者に求めているのは、専門的な知識や特別な技術ではありません。症状の状態、発症時期、経過、頻度、きっかけ、日常生活への影響といった、具体的な事実です。これらの事柄について、医師は順番にわかりやすく質問していきます。それらの質問に的確に答えていくことによって診察は円滑に進み、診断と治療の方針はより確かなものになります。
「大丈夫だと思いますが、一応来ました」「風邪だと思うのですが」などのあいまいな前置きは、かえって判断を難しくすることがあります。医師が正確に判断するためには、患者の率直で整理された情報提供が不可欠です。
医療は“共同作業”
医療は、医師のみで完結させるものではありません。とくに外来診療では、限られた時間のなかで医師と患者が協力することで、診療の質は大きく向上します。
患者が診察の前にあらかじめ情報を整理して、医師の問いかけに明確に応じる姿勢を持つこと。医師はその情報をもとに判断を下し、説明を行い、記録を残す。この相互作用がうまくかみ合えば、診療の質は格段に向上します。患者は医師と対峙するものでも従属するものでもありません。向かい合うのではなく、同じ方向を見て、ともに力を合わせる共同作業のパートナーです。
よい医療は評判のよい医師にかかれば自動的に受けられるものではありません。医師の力を最大限に引き出すためには、患者側の関わり方が鍵となります。
限られた時間のなかで、ミスを避け、質の高い医療を得るためには、医師の技量とともに、患者の協力が必要不可欠です。そこにこそ、「患者力」の本質があるのです。
宮澤 哲夫
みやざわ耳鼻咽喉科 院長
医師・薬剤師
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