「親として援助はしてあげたいけれど」年金夫婦の悩み
「お米も野菜もお肉も持っていきなさいね!」
そう言って、食材や調味料、日用品を袋や段ボールに詰めるのが、Aさん夫婦の恒例行事でした。
地方都市で暮らすAさん(66歳)と夫(68歳)は、年金で暮らすごく普通の老夫婦。二人の娘はそれぞれ30代で、上の娘は結婚して子どもが二人、下の娘は独身で一人暮らしをしています。
「一人で大変だろうから」「子どもにお金がかかるだろうから」。そう思って、二人の娘にはずっと“援助”を続けてきました。ですが、それはいつしか「当たり前」となり、やめ時を見失ってしまったといいます。
「娘たちは車で1時間ほどの距離に住んでいて、それぞれ月1回、車でうちに来てくれるんです。その時になると、つい色々と持たせちゃう。『こんなにいいの?』なんて言いながらも、結局うれしそうに持って帰る。その顔を見ると、こっちもうれしくてね」 とAさん。
おおよそですが、1回で4,000~6,000円分、それが2人分なので2倍です。Aさん夫婦の年金は二人合わせて月20万円ほど。光熱費、食費、通信費、家の修繕費や固定資産税、車の維持費、そして年を重ねるごとに増えてきた医療費。それらを支払えば、手元に残るお金はそう多くはありません。
「年金生活になってから、ガラッと家計事情が変わりました。それに異常な物価高でしょう? でも、それを娘たちには伝えられない。親の見栄なんですよね、結局」
退職金を住宅ローンの支払いにあて、借金はないものの貯蓄は数百万円。それでもAさんは、娘たちが来るとつい財布の紐を緩めてしまうのだといいます。
援助をやめたい、でも、やめるとは言いだせない……それはお金の問題だけではなく、親としての“つながり”の問題でもありました。
