老後の「生活設計」だけでは足りない
金融庁の報告書などで話題になった「老後2,000万円問題」は、多くの人に“備えの必要性”を再認識させました。しかし、それはあくまで平均的なシミュレーションであり、実際の老後には、数字に表れない「孤独」「目的の喪失感」といった要素もつきまといます。
また、資産が多くても、病気や判断能力の低下によって「お金をうまく使えない」という事態に陥ることも。高齢者を狙った詐欺や、不動産トラブル、成年後見制度の利用なども含め、“資産の持ち腐れ”に注意が必要です。
最近、和子さんは近所の図書館で週1回ボランティアを始めたといいます。
「ちょっとしたことですけど、『待ってくれている場所』があるのは嬉しいものです。誰かの役に立つって、やっぱり、生きている実感になりますね」
将来的には、地域の高齢者向けサロンに参加したり、得意だった書道を子どもたちに教えたりする活動も検討中です。
「“人生の終盤”なんて言葉、今まで自分には関係ないと思っていたけど、確かに少し寂しくなってきた。でも、だからこそ、これからの時間をどう使うか、考えていきたいですね」
資産があっても、孤独や目的の喪失が心を蝕むことはあります。老後の生活設計では、医療や介護だけでなく、「居場所」や「役割」といった“心の充足”も含めたプランニングが求められます。
和子さんのように、「もう一度、誰かのために生きてみよう」と思えるきっかけをつかむことが、経済的豊かさと精神的豊かさのバランスを取り戻す第一歩になるのかもしれません。
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