(※写真はイメージです/PIXTA)

老後を迎えるにあたり、多くの人が気にするのが「お金の不安」です。国の調査でも、「年金以外にどれくらい貯蓄が必要か」について悩む人は多く、特に退職後の生活設計には慎重になる方が増えています。しかし、十分な資産を築き、子育てや住宅ローンも終えた後であっても、「心から満ち足りた老後」を過ごせている人は、実はそれほど多くありません。経済的な余裕と、心の満足は、必ずしも一致しないからです。

資産は6,200万円、年金も月17万円

都内に暮らす74歳の和子さん(仮名)は、元・公務員の事務職員。退職金や夫の遺族年金を含め、現在は金融資産約6,200万円を保有しており、自宅も持ち家。年金も月17万円あり、生活に困ることはありません。

 

「子ども2人も大学を出て、独立してそれぞれ家庭を持っています。孫にも恵まれて、本当にありがたいことだと思っています」

 

そう語る和子さんですが、日々の暮らしの中で、ふとため息がこぼれる瞬間が増えてきたといいます。

 

「昔はね、旅行が好きだったんですよ。でも最近は、『誰と行こう』『行ってどうする』と考えてしまって。友人も高齢で、誘いづらいし、1人で旅館に泊まるのも、何だかむなしくて……」

 

健康に問題があるわけではなく、資金的にも自由がきく和子さん。しかし、時間とお金の使い方に迷う日々が続いています。

 

「最近は、老後の暮らしについて書かれた記事をよく読みます。でも、どれも“いかに備えるか”ばかりで、“どう生きるか”までは教えてくれないんですよね」

 

和子さんには、将来的な不安がないわけではありません。たとえば、医療や介護の問題。認知症への恐れもあり、今のうちにサービスを調べたり、エンディングノートも少しずつ書き始めたりしています。

 

「でも、そういう話を子どもにすると『まだ早い』って言われてしまって。私としては“これ以上迷惑をかけたくない”だけなのに」

 

結局のところ、「ひとりの時間」と「誰かと過ごす時間」のバランスに悩んでいるのかもしれません。

 

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