夫が語る「不動産活用のアイデア」に絶句
「陽子ちゃん、来週の土曜日のお客様って、友達?」
「ううん、不動産の会社の人。父が住んでいたマンションを賃貸に出そうと思って、その相談を…」
「あーっ、それ、ちょっと待って? その前に話したいことがあるんだよ」
「え?」
孝弘さんが「不動産を活用する、すごくいいアイデアがあるんだ」といって話し始めた内容に、陽子さんは思わず言葉を失いました。
「陽子ちゃんと僕だけだと、この家は大きすぎるじゃない? だから、お義父さんが暮らしていたマンションに、僕たちが引っ越そう」
「あそこは1LDKで、2人で暮らすには狭いじゃない」
「大丈夫だよ。それでこの家に、僕の母と姉と甥っ子たちが暮らせばいいじゃないか。ずっと広いし」
「……え?」
孝弘さんの実家は横浜市郊外のマンションです。そこには母親だけでなく、3年前に離婚した孝弘さんの姉と3人の子どもが同居していました。
「母と姉と甥っ子たちが横浜のマンションを出て、この一軒家に住めばすべて丸く収まる」というのが夫の理屈でした。
「家賃が5万円?」
「冗談でしょう? そうしたらこの家に、ずっとお義母さんとお義姉さんたちが暮らすの? 私たちに子どもができたら?」
「そのときはそのときだよ。おふくろと姉貴もちゃんと家賃を払うっていっている」
「いくら…?」
「5万円」
世田谷区の人気の高い駅から徒歩7分の4LDKの一軒家の家賃が「5万円」と聞いて、陽子さんは絶句しました。
「そんな家賃で貸せるわけないでしょう…」
「なんだよ、家族なんだから少しくらい協力したらどうなんだ。本当にお前はケチだな!」
