「自分なんて、年金月12万円でギリギリだよ」
都内近郊の古びた団地に暮らす70歳の独身男性・高村俊夫さん(仮名)は、近所でも“節約上手なおじいさん”として知られていました。普段の買い物は自転車でまとめ買い、外食はほとんどせず、服も何年も同じ物を着続けています。
「年金なんて月に12万円ちょっと。だから、ずっと質素に暮らしてきたんだよ」
そんなふうに語る高村さんの生活は、確かに慎ましいものでした。
ところがある日、年下の知人がパソコンの設定を手伝っていた際、画面に表示された証券会社のメールに目を奪われました。そこには「X月分配当金 1,523,000円入金済み」の文字が。
「……えっ、配当で150万円以上?」
驚く知人に対し、高村さんは一瞬黙ったあと、ゆっくりとこう答えました。
「……まあ、誰にも言ってなかったけど、昔から株をやっていてね」
高村さんは、大学卒業後に中堅企業へ就職し、定年まで勤め上げました。決して高収入ではなかったものの、20代の頃から少額で株式投資を始め、地道に高配当銘柄を買い増してきたといいます。
「無理せず毎月コツコツと買って、再投資していただけ。でも気づいたら、年間の配当が2,000万円近くになっていたんだ」
今では証券口座の評価額は3億円を超え、現金や投資信託などを含めた総資産は5億円を超えるといいます。それでも、なぜ「年金生活者」を装ってきたのか——。
「お金の話をすると、人が変わるからね。若い頃、親戚に投資のことを話したら、やれお金を貸してくれだの、保証人になってくれだのって騒がれてさ。だから、言わないって決めたんだ」
現在、交際している相手にもこの話はしておらず、旅行も外食も“割り勘”を貫いています。
