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「まとまったお金」に潜む落とし穴
相続金や退職金といったまとまったお金は、一見大金に思えるでしょう。しかし、老後の生活費として考えると数年で消えてしまうことも。特に年金収入が少ない人の場合、それは“最後のセーフティネット”になり得るものです。計画なく一気に使ってしまうと、精神的にも経済的にも大きな不安を抱えることになりかねません。
総務省の家計調査(2024年)によると、高齢単身無職世帯の平均支出は月約13万円。年金が月7万円の中川さんの場合、遺産がなければ赤字が常態化しており、700万円という金額も、本来であれば数年分の不足を埋めるにすぎなかったのです。
「贅沢」と「安心」のバランス
もちろん、「一度くらいは夢を叶えたい」と考える気持ちは自然なもの。問題は、その夢の叶え方です。
たとえば、相続金700万円のうち500万円を生活防衛資金として定期預金や国債で確保し、残り200万円で短期の海外旅行や趣味に充てるといった方法もあったでしょう。近年は「分割型の世界一周プラン」や「複数年にわたる短期ツアー」といった、一度に全額を投じるのではなく、余裕を残しながら楽しむ選択肢も増えています。
老後において大切なのは、「思い出の価値」と「生活の安心」の両方を天秤にかけること。ファイナンシャルプランナーとしては、次のようなアドバイスをします。
〇まとまった資金を得たときは、まず生活費何年分に相当するかを試算する
〇医療費・介護費など、今後必ず必要になる支出を優先的に確保する
〇残った分で「やりたいことリスト」に沿って計画的に消費する
これらを実践することで、「夢を叶える喜び」と「老後の安心」の両立が可能になります。
中川さんは「世界一周旅行」という夢を叶えました。しかし、残された老後は、資金不足による不安とともに過ごすことになりました。人生の最後に大きな贅沢をすることは否定されるべきではありません。しかし、その後の生活をどう支えるかを同時に考えることが、豊かな老後には不可欠といえるでしょう。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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