(※写真はイメージです/PIXTA)

国際的な税制競争が激化する中、日本企業の海外子会社戦略には再考が迫られている。単純な低税率狙いの節税だけでは、タックスヘイブン対策税制(CFC課税)により親会社への利益合算が行われ、期待した効果が得られないケースが増えている。今後は税務面だけでなく、事業・知財戦略を含めた総合的な対応が求められる。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

進化するタックスヘイブンの定義、いまや低税率=節税ではない

かつて日本では、タックスヘイブンの基準は「法人税率が国内の半分以下」とされていた。しかし2010年度以降は、法人税率20%以下の国・地域が対象となっている。加えて、オランダの資本参加免税制度など、現地の優遇制度を活用する企業も増えており、単純な税率比較だけでは判断できない時代になった。

 

タックスヘイブンに子会社を設立しても、現地の低税率だけを狙った節税は限定的だ。日本ではタックスヘイブン対策税制(CFC課税) が存在し、実体の乏しい海外子会社の利益は親会社に合算され課税される。このため、現地で工場や営業拠点を持つなど一定の実体要件を満たさないペーパーカンパニーでは、ほとんど効果が期待できない。

 

日本だけでなくアメリカ・カリフォルニアにも事務所を構える奥村眞吾税理士は「単なる税率の差だけでなく、移転価格や配当課税、売却益の優遇措置も考慮しないと、節税効果は思ったほど上がらない」と話す。

法人税減税に固執するだけでは、海外本社移転や資産移管といったリスクを避けられない

イギリスは法人税率の引き下げや知的財産権優遇制度(パテントボックス)を導入し、多くのグローバル企業が子会社を設立した。日本企業もその影響を受け、タックスヘイブン定義の見直しが検討された経緯がある。単純な税率競争に依存しても、国際競争力は維持できないことが示された事例だ。

 

「日本は法人税率のみを基準にタックスヘイブンを定義しており、グローバル企業誘致競争ではやや遅れをとっている。単に法人税減税に固執するだけでは、海外本社移転や資産移管といったリスクを避けられない」(奥村税理士)

 

今後、日本企業が国際競争力を維持するには、タックスヘイブン対策税制を前提にした税制運用の柔軟性だけでなく、海外事業拠点の設計や知財管理、資金調達戦略を含めた総合的な戦略的対応が不可欠となるだろう。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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