(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の離婚――いわゆる“熟年離婚”は、決して珍しい話ではありません。人生100年時代において、「老後を自分らしく生きたい」と考える人が増えている一方で、その決断が思わぬ孤独や困難を招くケースもあります。本記事では、安定した年金と退職金を得て離婚したものの、そこから孤独な老後に突き進んでしまった男性のケースをご紹介します。

「後悔しているわけじゃない。でも…」

老後の離婚を「後悔しているか」と問われると、光男さんは首を横に振ります。

 

「妻と一緒にいたとしても、あのままうまくやっていけたとは思えません。でも…“人生をやり直せる”と信じすぎていたのかもしれません。人と繋がるって、思っていたよりも難しいですね」

 

一人暮らしの高齢者の増加は、社会全体でも深刻な問題となっています。内閣府『高齢社会白書』(令和7年)によれば、65歳以上の単独世帯の割合は年々増加しており、2040年には全高齢者世帯の約4人に1人が一人暮らしになると推計されています。

 

また、孤独・孤立の影響は生活の質や健康リスクにも及び、「社会的つながりの欠如」が死亡リスクを高めるとの報告もあります。

 

現在、光男さんは「見守りサービス」付きの高齢者住宅への入居を検討中です。市の地域包括支援センターにも相談し、食事・安否確認・緊急時対応が受けられる民間サービスを一部導入しています。

 

「今さら誰かに頼るのは格好悪いと思っていました。でも、年を重ねると“ひとりではできないこと”が本当に増えるんですね。あのとき“離婚して自由に”と思っていた自分に、“本当に準備はできているのか?”と問いかけたい気持ちもあります」

 

老後の離婚や一人暮らしが、すべて悪いわけではありません。しかし、“自由”には“自己責任”という大きな重荷がのしかかってきます。

 

光男さんのように「やり直せる」と信じていた人ほど、現実の厳しさに直面したときのダメージは大きいのかもしれません。

 

「若いころのような“再スタート”じゃない。“続きの人生”なんですよね。今はようやく、その意味がわかってきました」

 

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