「私は“家政婦”じゃない」
ある日、母が外出先で倒れたことをきっかけに、家事のすべてを真理子さんが担うようになります。パートの時間を減らし、料理・洗濯・買い物・通院の付き添いまでこなす毎日。にもかかわらず、感謝の言葉どころか「味が濃い」「洗い物が甘い」と批判ばかりが続きました。
「ある夜、食器を洗っている最中に、母から『もっと役に立つ娘がよかった』って言われて、もう限界だと思いました。頭が真っ白になって…手が震えました」
それでも真理子さんは実家を出る決断ができませんでした。経済的に余裕がないうえ、メンタルの状態も安定せず、ひとり暮らしを再開するにはハードルが高すぎたのです。
近年、こうした「大人同士の家庭内モラハラ」への注目が高まっています。夫婦間や親子間でも、「精神的暴力」にあたるケースは少なくありません。
「実家に戻る選択は、自分なりの“生き直し”のつもりでした。でも、いつの間にか自分の居場所がなくなっていたように感じます」
現在、真理子さんは自治体の女性相談センターに定期的に通いながら、心身の回復に努めています。体調と相談しながら今の仕事を続けつつ、将来的にはより安定した生活を目指して、生活再建の準備を少しずつ進めているといいます。資金を地道に貯めながら、支援NPOとも連携を取りはじめたとのことです。
「親だから仕方ない」「家に入れてもらっているんだから我慢すべき」──そうした“無言のルール”が、大人同士の関係を歪めることもあります。家族であっても、尊重されるべき個々の境界線があり、それを無視することは「支配」と紙一重です。
親子であっても、他人と同じように「距離」と「配慮」が求められる時代。誰かの居場所を奪うことなく共に暮らすには、制度や支援だけでなく、私たち一人ひとりの意識の変化も必要なのかもしれません。
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