「もう働かなくていい」から始まった海外三昧の生活
千葉県在住の大澤誠一さん(仮名・68歳)は、国内大手メーカーに勤務していた元会社員。
60歳で定年退職後も再雇用制度を利用して65歳まで働き、退職金3,500万円とそれまでの貯金3,500万円、あわせて7,000万円を手元に残していました。
「正直、自分は老後資金に関しては“勝ち組”だと思っていました。住宅ローンも完済していましたし、年金も夫婦で合わせて月25万円近く入る。『贅沢さえしなければ一生安泰』のつもりだったんです」
しかし、退職後の自由な時間が増えると、誠一さんは「長年のご褒美」として、妻とともにビジネスクラスでの海外旅行に出かけるようになります。ハワイ、スペイン、南フランス、北欧──旅行好きの妻の希望もあり、2〜3週間の長期旅行を年2回ペースで楽しみました。
「ビジネスクラスで旅できるうちはしよう、と。ツアーは高級ホテルを選び、レストランも現地の有名店。毎回相当の額がかかりましたが、まったく後悔はなかったですね」
ところが、そんな生活を3年ほど続けたある日、通帳を見て誠一さんは違和感を覚えます。
「え、あと3,800万円しかない…?」
確かに、3年前には7,000万円あったはずの残高が、思っていた以上のペースで減っていたのです。旅行だけでなく、車の買い替え、孫への贈り物、趣味の美術品購入など、「小さな贅沢」が積もり積もって、年間の支出は想定よりずっとかさんでいました。
「まだまだ余裕だと思っていたんです。旅行だって今しか行けないって。でも、年金だけでは趣味を維持できないし、少しずつでも減っていくと、心理的に不安になりますね」
「持病も出てきて、これから医療費も増えそうです。旅行はしばらくお預けですし、年齢的に回数は落ちていくでしょうが、それよりも“この先何年生きるのか”が正直わからないのが一番怖い」
