妻の看病から始まった、生活の変化
「本当にコツコツ、堅実にやってきたつもりなんですよ」
義男さんは、公務員として40年以上勤め上げ、退職金と合わせて老後資金は約2,000万円を確保。年金も厚生年金で月18万円ほどあり、当初は「このくらいあれば、ゆっくり老後を過ごせる」と思っていたと話します。
ところが、妻・美佐子さん(享年68)が脳出血で倒れ、生活は一変します。入退院を繰り返すなか、病院への交通費、個室代、付き添いヘルパー、療養生活に必要な道具類――想定外の出費が次々に義男さんを襲いました。
「夫婦2人で使えばゆとりがあったはずのお金が、ひと月に10万円、15万円と出ていくようになったんです」
妻が亡くなった後、義男さんの生活費は思ったほど減りませんでした。光熱費、食費、通信費、固定資産税、住宅修繕費など、ひとり暮らしでも出ていくお金は多く、「気づけば生活費は月20万円近くに」。
さらに、美佐子さんの遺影を前に毎月花を供え、仏壇に線香をあげる日々を送るうちに、義男さんの気持ちはふさぎ込みがちになっていきます。外出も減り、健康状態は悪化。持病の高血圧に加え、糖尿病も悪化し、通院と薬代が家計を圧迫するようになったといいます。
義男さんはこれまで、生活が苦しくなるたびに「美佐子がいた頃はこんなことなかった」と振り返ってきました。交際費を減らし、外食をやめ、図書館や公園で過ごす日々が続きます。
「それでも、生活って思った以上にお金がかかる。特に医療費。年を取るほど通院が増えるし、保険が効いても1回3,000円〜4,000円とか。気づけば2,000万円なんて、あっという間でした」
現在、義男さんは「遺族年金」ではなく自身の厚生年金を受給中。持ち家と年金収入があるため、生活保護の受給基準を満たすのが難しい状況。介護保険は要支援1と認定されているものの、サービスの自己負担額は月数千円かかります。
高齢者の医療費は原則1割負担ですが、通院頻度や処方薬の量が増えると、意外に負担感が強くなります。また、歯科・眼科などは医療費がかさみやすく、「月に1万円以上払っている月もあります」と義男さん。
