遺産はなくても、責任は平等に
「お兄さんの気持ちもわかる。でもね、介護も看取りも全部私がやったの。そっちは何もしてないじゃない」
典子さんの言葉には、怒りというより疲れがにじんでいました。
相続においては、「法定相続分」で均等に分けるのが基本ですが、介護や家事労働を長年無償で担ってきた同居家族の貢献は「寄与分」として主張することができます。ただし、法的に認められるハードルは高く、証明も難しいのが実情です。
結局、松本家では「実家は妹が引き継ぎ、残った少額の預貯金はすべて葬儀費用にあてる」という形で協議はまとまりました。
「納得したとは言えないけど…もし通帳も何も見ずに『財産の半分をよこせ』なんて言っていたら、家族が壊れていたと思います」
蓋を開けてみれば、財産というよりも課題ばかりが目についた相続。けれども、そこから逃げずに向き合ったことで、家族の関係や自分自身のこれからと、改めて向き合う機会にもなったといえるでしょう。
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