投資をしている人の比率が高い「三大都市圏」
地方都市でセミナーをやらせていただくと、主催者の方に時々聞かされるのが「このあたりの人々は保守的でなかなか運用なんて手が出ないようでして…」というお話です。意外に多くの都市で同じような言葉を聞くことがありましたので、参加者が多く集まらなかった言い訳かなと、こちらが却って申し訳なく思ったものでした。本当に資産運用に地域性ってあるのでしょうか。
【図表】 三大都市圏の投資対象
2014年4月に実施した勤労者3万人アンケートから地域別のデータを分析してみることにしましょう。まずは首都圏、中部圏、関西圏の三大都市圏とそれ以外のエリアに分けてみます。そもそも三大都市圏では、投資をしている人の比率が30%前後で全国平均の27.3%を上回っていることもあって、投資対象がどれにも万遍なく広がっている傾向があります。その点で、三大都市圏以外と比べると分散の度合いが大きくなっていることは確かなようです。
そのなかでも首都圏はすべての金融商品の保有比率が、平均以上になっていますので最も投資で分散が進んだ地域ということができます。
一方、中部圏では日本株の比率が高くなっているほか、日本株投資信託の比率も高めに出ており、中部圏は相対的に日本株のウエイトが高くなっている地域と言えそうです。その分、外国株式、外国債券などは少なくなっています。中部圏のなかでも、愛知県、三重県で日本株・日本株投信の比率が高くなっている特徴があります。同様の傾向は茨城県、群馬県など北関東にもありますので、日本株の志向が強い地域性はありそうな気がします。
関西圏での特徴は外国為替証拠金取引(FX)と毎月分配型投資信託の比率が高いことでしょう。もちろん、この2つの金融商品は三大都市圏以外でも保有率が相対的に高い商品なのですが、関西圏は他の金融商品の保有率も比較的高いうえに、首都圏や中部圏よりもFXと毎月分配型投資信託の保有比率も高いのが特徴です。
逆に、三大都市圏以外の地域では、外国為替証拠金取引(FX)と毎月分配型投資信託の保有比率のみが高くなっていることが特徴となっています。
新潟、富山、石川・・・北陸地方は投資大国!?
都道府県別の金融商品の保有比率を集計し、分析してみると、思った以上に投資対象に対する志向の違いが都道府県別にあるように思われます。もちろん、全体で3万人を超えるデータでも、投資している人が鳥取県の28人などのようにデータの不十分さもあり、一概に断定できないことは承知しておいてください。
そのうえで、データから言えることは例えば岩手県、山形県などで日本株投信の比率が高く、総じて東北では投資信託の保有比率が高い傾向があります。新潟県、富山県、石川県の北陸地方では、意外に多くの金融商品の保有率でトップ5が並んでいます。投資大国なのかもしれません。
滋賀県、島根県は外貨預金、外国株投信、毎月分配型投信がトップ5に入る似た感じの投資性向が見られます。九州では熊本県が日本株の保有比率がトップ5に入るほか、全部で4つの金融商品で保有比率がトップ5に入るなど特筆できます。そのほか九州では南の県でFXや不動産投資も高めに出ています。
【図表2】 日本株を保有する比率が高い県トップ5
【図表3】 外国為替証拠金取引(FX)比率が高い県トップ5
【図表4】 毎月分配型投資信託の比率が高い県トップ5
ところで都道府県別のデータをもとに、投資の目的と投資対象の相関度を調べてみると、「退職後の資産形成」と正の相関がみられるのが、日本株投信、外国株投信、外貨預金などでした。これは「退職後の資産形成」という目的を持った人がこれら3投資商品に投資する傾向が強いことを示しており、参考になります。
ちなみに、これらの3投資商品のうち2つ以上がトップ5に入っている県は山形県、石川県、滋賀県、島根県などです。退職後の資産形成に一生懸命な土地柄でしょうか。