社会福祉が充実している日本で増えている、いわゆる「下流老人」。その大きな原因となっているのは高額な医療費にあるともいわれています。本連載では、この問題について、様々なデータを基に現状と課題を改めて見ていきます。

国民のおよそ「2人に1人が高齢者」という時代に

現代の日本は、これまで人類が経験したことがないほどの「超高齢社会」を迎えています。

 

1950年時点で、日本の人口は約8320万人でした。年齢人口の構成をみると、そのうち、0~14歳の「年少人口」は2943万人( 35 .4%)、15~64歳の「生産年齢人口」は4966万人(59・7%)を占めており、就労可能な社会を担う世代が6割近くを占めていました。一方、65歳以上の「高齢者人口」は411万人で、わずか4.9%にすぎなかったのです。

 

ところが、それから64年後の2014年、年齢人口の比率は一変しました。日本の総人口は1億2708万人と1.5倍に増えましたが、年少人口が1623万人(12.8%)と大きく減少。生産年齢人口は7785万人(61.3%)で、高齢者人口は3300万人(26.0%)と8倍になりました。

 

つまり子どもが減り、代わりに高齢者人口が増えているのです。1950年には、全国民の20人に1人が65歳以上の高齢者という比率だったのに対し、2014年には4人に1人以上が高齢者となっています。

 

今後も、高齢化の流れは止まりません。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によると、2050年の推計人口は9708万人で、年少人口は939万人(9.7%)と1割を切り、生産年齢人口は5001万人(51.5%)、高齢者人口は3768万人(38.8%)となっています。実に国民のおよそ2人に1人が高齢者という時代が来ようとしているのです。

重くなる一方の「現役世代」の負担

高齢化が進んでいるのは日本に限ったことではありません。イタリア、ドイツといった国でも、高齢化率は2割を超えています。

 

今や高齢社会は、先進国に共通した悩みです。世界銀行の各国別高齢化率のデータによると、2015年における世界第1位は日本で、26.34%です。第2位はイタリアで22.4%、第3位はギリシャで21.39%でした。こうしてみると、世界第1位といっても、2位、3位と比べてそれほど突出していないかのようにみえます。

 

しかし、他国と比べてより深刻なのは高齢化が進む速さです。内閣府の「平成27年版高齢社会白書」によれば、高齢化率が7%を超えてから14%に達するまでの期間は、フランスが126年、スウェーデンが85年、イギリスが46年、ドイツが40年でした。ところが日本は、1970年に高齢化率が7%を超えてから、わずか24年後の1994年に、高齢化率が14%に達しました。

 

これほど急速に高齢化が進んだ国は、他にありません。そのため日本では国の高齢化対策も後手に回っています。近年ようやく、子育て支援に力を入れ始めていますが、人口の減少を食い止めて増加に転ずるためには、女性1人当たり、2人以上を出産する必要があります。

 

国が有効な対策を打てない状況の中で、現役世代(生産年齢)の人数は伸び悩み、子どもの数は減っています。2015年時点では、2.3人の現役世代が1人の高齢者を経済的に支えている状況ですが、2050年になると、1人の現役世代が、1人の高齢者を支えることになると予測されています。現役世代は高齢者を背負い、なおかつ複数人の子どもを育てていかなければならない―現役世代が抱える負担は、今後どんどん重くなるばかりです。

 

【図表1】人口ピラミッド

 

【図表2】 世界の高齢比率

 

【図表3】 高齢世代人口の比率

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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