笑顔のおばあさん…「過剰な親切」に絶句
お隣に住む80代のおばあさんは、見た目も優しげ。引っ越してきた日から笑顔で挨拶し、ゴミ捨てのルールを教えてくれ、畑でとれた野菜をお裾分けしてくれる――都会にはない温かさに、佳子さんは「なんて親切」と感動しました。
田舎には、独特の“村社会”のしきたりや暗黙のルールがあり、外から来た人は冷たく扱われることもある――そんな話を耳にしていた佳子さんは、「この人が隣でよかった」と胸をなで下ろしました。都会の孤独な暮らしとは違い、ここではきっと温かい人間関係に恵まれるだろう。そう思ったのです。
朝まだ薄暗い時間に「おはようございます、今日は雨が降りそうよ」と訪ねてきたり、昼・夕方・夜と一日に何度も顔を出したり。ドアに鍵をかけていると庭に回り込み、窓越しに声をかけてくることもありました。
「困っていることはない?」「今日の夕飯は何を食べるの?」「お届けものがあったみたいだけど、届いたのは何?」と根掘り葉掘り聞かれ、次第に佳子さんの心はすり減っていきました。
夫も困惑しましたが、相手は根っからの世話好き。悪意ではないことはわかるので、強く断れません。
「もともと東京の“適度な距離感”の人付き合いに慣れていたせいで、なんだかお隣さんを怖く感じるようになってしまって。相談できる友達も近くにはいませんし、どんどん辛くなってしまいました」
わずか1年で東京に帰還…失った老後資金に溜息
こうして夫婦は、移住からわずか1年で東京に戻る決断を下しました。しかし、ここでも金銭的な現実を突きつけられます。
田舎暮らしをするにあたって、夫婦は東京のマンションを売却。売値は約4,000万円、老後資金としても十分な額になるはずでした。信州で選んだのは、畑付きの中古戸建て。購入額は700万円ほどで、都会に比べれば破格です。
しかし「安い」と思ったのは最初だけ。水回りや屋根の補修に数百万円、寒冷地仕様のストーブや断熱リフォームに数百万円。さらに軽自動車2台の合計で、300万円ほどの出費になりました。都会で使っていた家具や家電も「この機会に」と買い替え、100万円以上。その他、引っ越し代や雑費などもあり、移住から1年で1,500万円近い出費になっていました。
しかも、戻る決断をしたときに残ったのは、買値より安くしか売れない地方の家と、価値の落ちた車や家具。マンション売却で得た資金は目減りし、完全なる“赤字移住”となってしまいました。
佳子さんはこう振り返ります。
「自然があって静かだから幸せ、なんて単純な話ではありませんね。人間関係も難しいし、気候もお金も想像以上に大変でした。都会の良さを、手放して初めて気づきました」
田舎暮らしには、自然の魅力だけでなく現実的な不便さや出費、地域の人間関係など、見落としがちな要素が山ほどあります。十分な下調べと現実的なシミュレーションをしなければ、夢が悪夢に変わることも。
都会にも田舎にも、それぞれ良い面と悪い面がある。大切なのは「自分たちの暮らしに本当に合うのはどこか」を冷静に見極めること。佳子さん夫婦の経験は、そのことを教えてくれます。
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