税務調査の結果「約700万円」の追徴課税
その後、英明さんのもとに税務調査が入り、いくつかの指摘を受けました。その内容は主に下記の2点です。
・「3,000万円の特別控除」と「住宅ローン控除」は両方適用を受けることができない
・「3,000万円の特別控除」を申請しているが、その実態がなく、適用を認められない
指摘を受けた英明さんは、驚きを隠せません。
実は英明さん、実家の売却の申告について、知り合いから「『3,000万円の特別控除』を適用すると税金がかなり安くなる」と聞いたことから、売却前に住民票を実家に移して実行したとのこと。また、資金的な余裕がなかったこともあり、専門家には相談せず、自分で申告していました。
「3,000万円の特別控除」の注意点
そもそも3,000万円の特別控除は、実際に自分が住居として住んでいた場合に適用が可能となります。形式的に条件が揃っていたとしても、実態として英明さんが実家に住んでいたという証拠を示さなければいけません。
英明さんは今回、適用を受けるために住民票を移して、実家を売却しました。
たしかに売却時点の住民票は実家住所でした。しかし、税務署が調査した結果、英明さんが住民票を移動させたのは売却の半年前であり、実態として猪上一家が実家に住んでいた事実がなかったことが判明。
水道光熱費や郵便物の受取先など、どれをとっても実家に居住していたという実態を示すものはありません。そもそも勤務先が都内であるのに、大阪に住んでいるというのも不自然な話です。
この結果、修正申告を行うこととなり、約700万円の追徴課税を支払うハメに。本税である所得税は約600万円でしたが、加算税と延滞税約100万円が課税されてしまいました。
税務署は「個人の申告」を厳しくチェックしている
日本の法律では、自分が自宅として住んでいる住居を売却した場合、今回の「3,000万円の特別控除」や「買換特例」などにより、税負担が少なくなるように配慮されています。
一方、この特例によって多額の節税が可能となるため、なかには今回のように本特例を悪用した結果、後日税務署から指摘されるケースが後を絶ちません。
この点、特に個人による申告は税務署も厳しくチェックしているため、不動産のような金額が大きい資産の売買時は不正を行わないことはもちろん、不安な場合はあらかじめ専門家に相談してから申告を行うことをおすすめします。
宮路 幸人
宮路幸人税理士事務所
税理士/CFP
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