まさか…税務署から告げられた夫の“もう一つの顔”
調査当日、調査官2名が来て税務調査が始まりました。まったく心当たりのないBさんに対して、調査官が「今回の調査に伺った理由」を告げます。
「ご主人は海外に資産をお持ちですよね? そちらについてお聞きしたいのですが」
「海外に資産ですって? 確かに夫はしょっちゅう野球を観に渡米していましたが、海外に財産があるなんて聞いていませんよ……」
調査官は資料を示しながら、淡々と説明を続けます。
「ご主人は米国の銀行に口座をもっていたようですね。国内のX銀行から頻繁に送金していたようです。現地での滞在費や野球観戦、投資の費用もこちらから引き出していたようですね」
調査の結果、夫は日本から送金したお金を元手に、現地で株式や暗号資産にも投資しており、多額の利益をその海外口座に貯めていたことが判明しました。
結局、税務調査によって総額約5,000万円の未申告資産が発覚。Bさんには約1,000万円もの追徴課税が課されることになったのです。
Bさんに預金の減少を心配させまいと夫が隠していた海外預金が、結果的に大きな税務トラブルを招いてしまいました。
税務署は海外資産を狙っている
円安などを背景に、海外に資産を保有している富裕層が増えています。国外財産であろうと、相続が発生した場合、その財産を申告する義務がありますが、近年では海外資産の相続税の申告漏れも増加しているのが現状です。
国税庁は、各国の税務当局と金融口座の情報を交換しています。そのため「国外の財産だからバレないだろう」という思い込みは通用しません。
その情報網の代表例が、「CRS(共通報告基準)」です。日本を含む100ヵ国以上が参加しており、各国の税務当局は金融機関を通じて非居住者の口座情報を共有しています。アメリカはCRSには参加していませんが、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)や日米租税条約を通じて日本と二国間の情報共有協定を締結しています。
相続税は、基本的には故人が所有していたすべての財産が対象です。そのため、海外資産も含めて、適切に相続税を申告しなければなりません。
なお、「海外送金に対する報告制度(国外送金等調書法)」により、1回あたり100万円を超える海外送金をした場合、税務署に報告する義務があります。そのため、海外への送金が多いと、それだけで税務署の注意を引くと考えていいでしょう。
