老後資金は足りるのか?
通帳の残高を見た勝史さんは、娘の結婚費用どころか、自分たち夫婦の老後資金も危ういのではないかと恐怖に襲われました。
家計を把握していた妻に「こんなにお金がないなんて」と問いただすも、「結婚費用のことまで考えてなかった。お金を使ってきたのは私だけじゃなく、あなたも同じ。老後資金は退職金を使えば大丈夫じゃない?」との返答です。
勝史さんは、慌ててファイナンシャルプランナーの元に駆け込みました。
ファイナンシャルプランナーは、老後の収入のベースとなる年金について説明をしました。勝史さんは50代で年収1,000万円を超えましたが、厚生年金の計算の元になる生涯賃金は800万円程度。その金額で65歳から受け取れる老齢厚生年金額は年間約170万円、老齢基礎年金の約81万円を加えても約251万円。月額に換算すると約22万円です。
妻の老齢基礎年金を足したとしても、年金は約月27万円。それから引かれる税金や社会保険料を考えると実際に使える額は約23万円です。年金暮らしになれば、手取り月61万円の生活から一気に手取り月23万円の生活になるわけです。
それを聞いた勝史さんは、震えが止まりませんでした。収入が3分の1ほどに減るうえ、現在の貯金はわずか100万円。退職金は2,500万円ほど受け取れる予定ですが、住宅ローンの残債に充てればほとんど残りません。
高収入に浮かれた人生が一転、窮地に立たされてしまったのです。
「1,000万円=高所得」でも、それほどの余裕はない現実
勝史さんの失敗は、子どもにお金がかからなくなれば、自然に貯蓄できるだろう、年収1,000万円あれば遠慮なく使っても大丈夫だろうと勘違いしていたことです。
年収の増加に合わせて生活レベルを上げ、自由にお金を使い、貯蓄をほとんど意識しない生活を送っていました。それではいつまで経ってもお金が貯まるはずがありません。妻に家計管理を一任し、収支の共有を一切していなかったことも問題でした。
勝史さんは、ファイナンシャルプランナーの助言のもと、家計の見直しに取りかかりました。食費や交際費、妻の美容費など支出で削れる部分を見つけ、早速実行に移すことにしたのです。
その結果、毎月15万円程度の貯蓄ができることが判明した勝史さん。これから定年までの5年間で約1,000万円の貯蓄を目標にしています。外車も高く売れるうちに売却しようと考えています。
ファイナンシャルプランナーにはこうも言われました。勝史さんが年収1,000万円でも、妻は専業主婦で無収入。妻と夫2人で500万円ずつ稼ぐ家庭と世帯収入は変わらない。最初からそこまで余裕のある家計ではなかった、と。
娘は、結婚費用は自分たちで工面すると言ってくれたものの、申し訳なさでいっぱいだったと勝史さん。しかし、今は老後資金を貯めて、娘夫婦に迷惑が掛からないようにする方が先決です。
収入が多くなったときに、少しの贅沢をすることは問題ありません。しかし、家計をしっかり意識しながら行うことが大前提。また物価が上がり続ける今、「憧れの年収1,000万円」は、昔よりも実質的な価値が下がっています。勝史さんのように妻が専業主婦であれば、高収入世帯とは言い難いのが現実です。
だからこそ、収入に見合った生活設計と長期的な資産形成を心がけること。収入が上がっても支出の管理を続けることが、安定した豊かな暮らしへの近道と言えるでしょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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