衝撃の銀行残高に妻、唖然
60歳で嘱託社員になってから2年。上の娘は大学を卒業しましたが、下の娘はあと3年。退職金の多くを住宅ローンの返済に充てましたが、まだ一部残っています。もう、もたない——。孝一さんは、追い詰められた挙句、真実を告げました。
「本当にすまない。これが、うちの全財産だ」
残高は約120万円。差し出された通帳を見た瞬間、美香さんは理解が追いつきませんでした。
「……これは生活用の預金だよね? 他にもあるよね?」
孝一さんは、静かに首を振るだけでした。
「ちょっと待って、本当にこれだけ? どうして?」
そこで初めて、収入が大幅に減っていた事実を聞かされた美香さんは、言葉も続かないほどのショックを受けました。
高収入の夫に頼りきり…「きちんと話をしていれば」
「あの人から仕事の詳しい話は聞いたことがありません。年収は1,500万円になったと聞いたことがありましたが、かなり前のこと。逆に、今はもっと上がっているのかなって思っていたぐらいです」
美香さんはため息をつきます。夫の年金見込み額も、この時初めて知りました。その額、月18万円ほど。一般的に見れば高い方ですが、現役時代の収入と比べれば、当然大きく差があります。
「あなた、65歳になってもゆっくりしている場合じゃないわ。私も働き続けるから。いえ、すぐにもっとお給料のいい仕事を探さなきゃ」
まずは、下の娘の大学卒業が最優先。ひとまず家計を引き締め、美香さんの転職を目指すことに。家の売却も視野に入れ、見積もりを取り始めました。不動産価格が上昇していることは、美香さんにとって唯一の救いでした。
「高収入の夫にずっと助けられてきた。私は寄りかかりっぱなしで、夫も弱みを見せられなかったんでしょう。今思えば、私がちゃんと聞くべきでした。私の方が残りの人生はずっと長い。不安ですが、とにかく生活が崩壊しないように、何でもやるしかありません」
高収入の夫に頼りきる、家計をどちらか一方だけが管理する、収入減を把握しないまま生活レベルを維持してしまう。こうしたケースに当てはまる家庭は決してめずらしくありません。しかし、本当の安心は一時の収入の多さでは決まりません。夫婦で家計を共有し、未来の計画を立ててこそ生まれるのです。
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