「給与が増えたのに、手元には残らない」
所得税、住民税、社会保険料――日本は累進課税を採用しており、年収が上がればそのぶん課税額や保険料の負担も増えていきます。そのため、「給与は増えたはずなのに手取りが全然変わらない」という声は、いまや多くの働く人たちにとって共通の実感といえるかもしれません。
実際、国税庁『令和5年分 民間給与実態統計調査』によれば、民間企業に勤める給与所得者の平均年収は458万円。一見するとそれなりの水準に見えるかもしれませんが、給与の分布を見ると、また違った景色が見えてきます。
まず男性の給与分布を見てみると、最も多いのは「400万円超~500万円以下」で17.5%(504万人)。次いで「300万円超~400万円以下」が14.9%(430万人)、「500万円超~600万円以下」が14.0%(404万人)と続きます。つまり、男性の3人に1人以上が年収400万円~600万円の範囲に集中しているのです。
一方、女性は「100万円超~200万円以下」が最も多く20.5%(449万人)。次いで「200万円超~300万円以下」が19.6%(430万人)、「300万円超~400万円以下」が18.1%(395万人)となっており、多くの女性が非正規や短時間労働の影響で低年収にとどまっている実態も見えてきます。
勤続年数別に平均給与を見ると、男性は長く勤めるほど給与も上がり、30~34年の層が最も高く808万円。女性も同じく30~34年の層が最も高く480万円ですが、男女間の格差は依然として大きく開いたままです。
年齢別では、男性は60歳までは年齢とともに給与が上がり、55~59歳の層で最も高い平均712万円を記録します。女性の場合、年齢による大きな変動は見られません。
「真面目に働けば収入も増えていく」と考えたいところですが、見落としてはならないのが課税の構造です。
たとえば、1年を通じて勤務した給与所得者のうち、年間給与800万円超の人は562万人(全体の11.1%)にすぎません。ところが、彼らが負担している税額は合計7兆8,135億円で、全体の所得税の65.7%を占めているのです。つまり、日本の所得税収の多くは、ごく一部の高所得者に依存している構造になっています。
2025年2月時点での日本の人口は約1億2,344万人。そのうち労働世代(15歳〜64歳)はおよそ7,354万人ですが、800万円以上の年収を得ているのは全体のほんの一握り。しかも、その少数に多くの税負担がのしかかっているのです。
