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日米通商交渉、日本側も一定の譲歩を引き出す形で着地へ
「トランプ関税」を巡って難航していた日米の通商交渉が7月下旬に合意に達した。米国が導入していた高関税措置の全面撤廃は見送られたが、自動車関税の引き下げや相互関税の緩和が実現し、日本側も一定の譲歩を引き出すことに成功した。
経済産業省の試算によれば、今回の合意によって日本企業が負担していた約1.6兆円相当の関税コストが段階的に削減される見通しとなっており、とりわけ自動車業界や部品サプライヤーの収益改善が期待される。
また、USTR(米通商代表部)筋は、今回の合意について「今後、米国が他国とのFTA交渉を進めるうえでの“公正な関税水準”のモデルになる」と説明。日本との合意が、世界的な関税再編の「雛形」になる可能性も示唆された。
市場は好感、輸出関連株に資金流入
7月23日の東京株式市場では、日経平均株価が前日比で+712円(+1.8%)と大幅高を記録。主力のトヨタ、マツダ、日産といった自動車株や、SUBARU、デンソー、住友電工などの部品・素材関連銘柄に買いが集まった。
投資家心理を押し上げたのは、トランプ前大統領による「関税は最大15%で抑える」という発言だ。この明確な水準提示が、過度な追加関税への警戒感を後退させたとみられる。
米ゴールドマン・サックスが同日発表したリポートでは、「自動車関税の引き下げと為替の安定が日本企業の利益率にプラスに作用する」と評価されており、投資家のポジション調整が進んだ。
富裕層の資産構成にも影響、“通商政策リスク”の可視化進む
こうした通商政策の変化は、市場全体だけでなく個々の資産運用戦略にも波及する。関税は製品価格、収益構造、競争力、ひいては企業価値に直結するため、株式、REIT、プライベートエクイティなど幅広い資産クラスの価値変動要因になりうる。
特に、米国ではすでに鉄鋼やアルミ、農産品への関税引き上げに加え、ゴールドマン・サックスが指摘するように、2026年以降には航空機、大型車両、医薬品などへの新関税が検討されている。これらは製造業やグローバル・サプライチェーンに密接に関わる領域であり、保有銘柄やエリアによっては資産への影響は小さくない。
富裕層に求められる「地政学リスク対応型ポートフォリオ」
アメリカの税制に詳しい奥村眞吾税理士は、それらを踏まえたうえで、日本の富裕層の資産防衛に必要な対応についてこのように指摘する。
「通商政策の不確実性が高まる今、富裕層の資産運用には『状況に応じて動かせる設計』が求められるといえます」
従来、富裕層にとってリスク管理は「地域分散」と「業種分散」が基本であった。
「政治・経済・金融の多元的リスクに対応できる運用設計こそが、これからの富裕層にとって最大の“資産防衛術”となるのではないでしょうか」(奥村税理士)
最近の地政学リスクや規制変更の頻発により、従来型の静的な分散モデルでは不十分になりつつある。柔軟かつ臨機応変な「地政学リスク対応型ポートフォリオ」が求められている。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
