(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年に刷新されたNISA制度が、さらなる進化を遂げようとしている。政府・与党は「つみたて投資枠」の対象となる株価指数の要件を見直し、新たなタイプの投資信託商品にも門戸を開く方針だ。従来の「長期・分散・積立」という理念は維持しつつ、柔軟で多様な資産運用を可能にする今回の規制緩和は、投資初心者から富裕層まで幅広い層に新たな選択肢をもたらす。貯蓄から投資への流れを定着させる鍵となるのか。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

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個人の資産形成戦略に「大きな転機」をもたらす可能性

政府・与党は現在、NISA制度の「つみたて投資枠」における株価指数の選定要件を見直し、新たなタイプの投資信託商品にも対応できるよう、実質的な緩和を検討している。これは、NISAを通じて資産形成を図る個人投資家の戦略に、大きな転機をもたらす可能性がある。

 

アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所の花村泰廣氏は、NISA口座の普及が着実に進んでいることを指摘する。

 

「新しいNISA制度が始動して1年3ヵ月が経過した2025年3月末時点でのNISA口座数は2,647万に達し、政府が掲げる2027年末の目標である3,400万口座に向けて順調に推移しています。成人のなかでも実際に投資することができる人を対象とすれば、ざっくり3人に1人がすでにNISAを活用していると考えています」

 

2024年から本格始動した「新NISA」では、年間240万円まで投資できる「成長投資枠」と、年間120万円までの「つみたて投資枠」の2本立てが導入されている。前者は上場株式や約2,100本の投資信託が対象であるのに対し、後者は約300本に限定され、さらに対象となる株価指数も日本株4種、海外株11種にとどまっているのが現状だ。

 

金融庁が今年6月に公表した『NISAの効果検証』によれば、NISAの利用者層を年収別に見ると、年収300万円未満から700万円程度の層がボリュームゾーンとなっており、給与階層の構成比とおおむね一致している。

 

「NISAは特定の富裕層ではなく、一般の会社員や公務員が中心となって利用している制度であることが金融庁の資料から読み取れます。また、つみたてNISAが導入された2018年以降、コロナ禍を経て若年層の利用も急増し、2024年の制度刷新を機にさらに普及が進んでいます」

 

花村氏はまた、このように分析する。

個人投資家の「実質的な選択肢の拡大」を図る動き

今回の見直しでは、「マーケット全体を広くカバーする」という従来の指数要件を、「特定分野の影響を過度に受けず、長期的な信頼性が見込まれる指数」と読み替える方向が示されている。また、「市場関係者に広く浸透している」という条件も、「新規の指数であっても、値動きが分かりやすく、継続性が担保されるものであれば対象としうる」と再解釈される見通しだ。

 

この見直しの本質は、「長期・分散・積立」というNISAの理念を維持しながらも、投資対象をより柔軟に、現代のマーケット環境に即した形で拡充する点にある。つまり、これまでTOPIXや全世界株式といった画一的な指数に限定されていた商品選定から脱却し、個人投資家にとって実質的な選択肢の拡大を図る動きだといえる。

 

こうした制度変更の背景には、政府の掲げる「貯蓄から投資へ」という明確な方針がある。2024年末時点で、日本の家計が保有する金融資産は約2,230兆円。その半分以上が依然として現預金に滞留しており、この巨額の遊休資金をいかに成長市場へ呼び込むかが喫緊の課題とされている。

 

「今年5月に日本証券業協会が公表した『新NISA開始1年後の利用動向に関する調査報告書』において、2024年に新NISAで金融商品を購入した人のリスク性金融資産の保有割合を見ると、株式と投資信託を組み合わせて活用している層が多いのではないかと推察されます。株式と投資信託の保有は平均で、株式が約35%、投資信託が47%となっています。これは、成長投資枠とつみたて投資枠を組み合わせた運用が浸透し始めている証といえるでしょう」

 

「つみたて投資枠ではインデックス型投資信託の選好が明確で、なかでも全世界株式のようなグローバル分散型インデックスファンドへの支持が際立っています。投資初心者を含め、多くの個人投資家が『長期・分散・積立』という基本に忠実な姿勢を取り始めており、制度設計の方向性が着実に成果を上げつつあることが示されています」(花村氏)

主体的な「リスク」「リターン」の判断が求められる

今回の見直しは、従来NISAのメリットを感じにくかった富裕層にとっても、新たな魅力を提供する可能性がある。特に、ESG(環境・社会・ガバナンス)や生成AI、再生可能エネルギーなど、今後の成長が期待されるテーマ型指数への投資が解禁されれば、より戦略的かつ多様な資産運用が可能になる。年間投資枠に制限があるNISAは、まとまった資金を動かす富裕層には不向きと見られてきたが、「テーマ投資」や「新興分野への分散投資」が可能になれば、その評価も変わってくるだろう。

 

さらに、リスク・リターン特性の異なる債券や不動産投資信託(REIT)なども対象となれば、リタイアメント層を中心とした安定志向の投資ニーズにも応えられる。NISAの最大の利点である「運用益・配当の非課税」という税制優遇は、高所得者層にとっても極めて有効な節税手段であることに変わりはない。

 

ただし、選択肢の拡大は同時に「自己責任」の範囲も広がることを意味する。これまでは、金融庁の選定基準という“安心のフィルター”が一定の役割を果たしていたが、今後は投資家自身が指数や商品の特性を理解し、主体的にリスクとリターンを判断する力が求められるようになる。

 

今や、NISAは単体の制度として捉えるべきものではない。富裕層の間では、家族信託や法人資産の管理と連動させ、NISAを資産全体設計の一部として活用する動きが広がりつつある。今回の規制緩和は、そうした複合的な資産運用の自由度を大きく高める契機となる。

 

「こうした行動の広がりを一時的なブームに終わらせず、資産形成の『新たな常識』として定着させていくには、金融リテラシーのさらなる普及と、中立的な商品比較情報の提供が不可欠です。政府・金融機関・教育機関が連携し、個人投資家が自立的に判断できる環境整備を強化していくべきです」(花村氏)

 

新たな時代の資産形成ツールとして、NISAが再び脚光を浴びようとしている──その変化を正しく捉え、自らの戦略にどう組み込むか。まさに今、投資家の「目利き力」が試されている。

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

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