最低賃金は「上げればハッピー」とは言えない
佐藤:最低賃金を高めに設定すると、雇用にどんな影響がありますか?
井堀:ここでは企業がどれだけの労働者を雇おうとするかという労働需要と、労働者がどれだけ働きたいかという労働供給の関係で説明できるんだ。市場経済で政府の介入がなければ、需要曲線(右下がり)と供給曲線(右上がり)の交点で賃金が決まる。たとえばこの交点をAとすると、そこで均衡賃金と雇用量が決まるわけだね。
佐藤:なるほど。そこに政府が最低賃金Bを設定して、それが元の賃金より高かったら、どうなるんでしょうか?
井堀:企業側(需要)は賃金が高くなったらコストが増えると考えて雇用を減らそうとする。一方で、労働者側(供給)は賃金が高いならもっと働きたいと考えて供給量を増やす。結果、労働供給が労働需要を上回る部分が失業にあたるんだ。グラフ上だと、CからDまでの差が働きたい人はいるのに雇ってもらえない失業者になるわけさ。
佐藤:つまり、高めの最低賃金が設定されると、そこで働ける人は時給が上がって得をするけど、弾かれる人も出てしまうということですね。
井堀:その通り。もちろん、最低賃金が適度な水準なら、企業が生産性向上に励んで雇用を維持したり、結果的に全体の賃金水準が底上げされたりする面もある。ただ高すぎると失業を生むリスクが高まるという議論があるわけだね。
解雇するのは難しい
佐藤:日本で解雇って言うと、自由にできない印象がありますが、実際はどうなんでしょう?
井堀:そうだね。使用者が一方的に雇用を打ち切るのが解雇に当たるけど、日本の法律では客観的に合理的な理由がないと認められない。つまり社会通念上相当とみなせない解雇は無効になるんだ。これは労働契約法第16条に定められているよ。
佐藤:具体的にはどんなケースなら解雇が認められるんでしょうか?
井堀:たとえば、労働者の側に重大な落ち度があるとか、職務規律を著しく違反して会社に大きな損害を与えたなどの事情があるとき。とはいえ、1回の小さなミスですぐ解雇が正当化されるわけじゃなくて、行為の重大性や悪意の有無、企業が被った損害の大きさを総合的に判断する。最終的には裁判所が正当性を認めるかどうかになる。
佐藤:じゃあ、解雇するには具体的にどんなルールがあるんですか?
井堀:まとめると大きく3つある。
①30日以上前に解雇予告をする
②予告しない場合は平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払う
③解雇そのものに客観的合理性や社会通念上の相当性が必要
だね。
井堀利宏
東京大学名誉教授
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