少子化はなぜ止まらないのか
佐藤:日本が少子化に歯止めをかけられないのは、具体的にどんな理由があるんでしょう?
井堀:要因はいくつも重なっていてね。まず、途上国では子どもが生産財だ。家の仕事を手伝ってくれるし、乳幼児死亡率が高いからたくさん産んで育てるインセンティブがある。さらに老後は子どもの経済力に頼るしかないから、自然と子だくさんになる。だけど先進国になると、そんな状況が変わる。
佐藤:具体的には、乳幼児死亡率が下がったし、子どもが親の仕事を手伝う機会もなくなったんですよね。そこに加えて社会保障が整ってきたから、老後を子どもに頼らなくても済むようになった……。
井堀:そう。だから子どもはむしろ贅沢品に近い存在になった。昔のように家の仕事を手伝わせるわけでもなく、老後の世話を期待するわけでもない。すると、少なく産んで大事に育てるようになる。
佐藤:IT化で教育コストも上がっていますよね。子どもが高いスキルを身につけないと厳しい時代になっていて、大学まで通わせると相当お金がかかる……。
井堀:そこも大きい。特にIT社会では高等教育が欠かせなくなって、子育て費用がかさんでしまう。また、就職しても高賃金は期待できない。さらに日本では女性が出産と同時に労働市場から抜けるパターンが多くて、有能な女性ほど本来得られるはずの給与を失う機会費用が高い。結果的に子どもを持つコストが大きくなっているんだ。
佐藤:これらの要素が複合的に働いて、少子化が進行しているわけですね……。
井堀:そう。途上国型の子だくさんの背景がなくなって、先進社会型の高コスト子育ての時代になっている。加えて女性の働き方や社会規範も変わりきれていない。だから日本では少子化が極端に進んでしまっているんだよ。
佐藤:日本の少子化って相当深刻ですけど、世界的にはどうなんでしょう? 同じように少子化が進んでいる国は多いんですか?
井堀:実は日本よりさらに少子化が進んでいるのが韓国だよ。2018年時点で出生率が0.977と1を割り込み、2023年には0.72というOECD加盟国最下位の水準まで下がっている。東アジア全体を見ても、中国や台湾がほぼ1.0程度で、日本以上に低い数値なんだ。
佐藤:なぜ東アジアは特に出生率が低いんですか? 文化的な要因ですか?
井堀:1つの理由に、儒教の影響で男尊女卑が強い社会規範があり、子育ての負担が女性に偏るからじゃないかと言われている。ヨーロッパでもイタリア、スペイン、ギリシャなどで出生率が低めだけど、そこはキリスト教の伝統的社会規範が働いているという指摘もある。要は、家族観や女性の役割に対する考え方が、出産行動に大きく影響するんだ。
井堀利宏
東京大学名誉教授
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