意気揚々と早期退職し自由を謳歌するも、迫りくる落とし穴
突如得た大金で、Aさんはすっかり気が大きくなりました。これだけあれば、もう働かなくても何とかなるだろうという甘い考えが頭をよぎります。
もともと仕事が好きではなく、生きるために働いていただけだったAさん。手元に大金があるのに、満員電車に揺られて会社に行くのは馬鹿らしく思えたのでしょう。Aさんは突然会社に退職届を提出、引き継ぎも満足にしないまま、会社を去りました。
一生働かなくてはならないと思っていた人生は一変しました。好きな時間に起きて、好きな時間に寝る生活。これまで割引シールが貼ってあるお弁当に手を伸ばしていたのが、好きなものを買えるように。そして、夜の町にも通うようになり、一晩で数百万を使うこともあったといいます。
しかし、そこで出会った女性に「生活に困っている」「一緒に暮らすためにお金を貸してほしい」そうお願いされ、複数回にわたり数百万円ずつお金を渡してしまったAさん。人生で女性から頼られるという経験がなかったAさんにとって、甘美な誘惑だったのでしょう。
さらに、酒の席でうっかり遺産の話をしてしまったことから、詐欺師の格好のカモに。「安全に、簡単にもっと増やせる投資がある」という言葉に、あっさりと騙されたのでした。
あっという間に危機的状況へ
浪費や詐欺被害が重なり、わずか3年で資産は1,000万円を切るまで激減。気が付けばAさんも57歳。現実が一気に押し寄せてきました。
早期退職で厚生年金を納めていない分、65歳からの年金額も少なくなることが判明。余裕の老後だったはずが、危機的な状況に向かっていることに気づいたのです。
あわてて働き口を探してハローワークに行ってみたものの、60歳が近づいたAさんを好条件で採用してくれる企業は見つかりません。ついには、かつて勤めていた会社を訪れ再雇用の打診をするまでに。しかし、あまりに身勝手な辞め方をしたこともあり、あっさりと断られました。
結局、月収24万円、ボーナスなしの契約社員として、なんとか再就職することはできました。しかし、「せっかく大金を手にしたのに、少しずつ使っていれば一生暮らせたのに、馬鹿だった……」と、後悔が止まらない日々を送っていると言います。
大金で幸せになれるかは、その人次第
これまで手にしたことがない大金を手にすると、生きる選択肢は確かに広がります。しかし収入が1円もないと、資産減少はあっという間。「使い切れないほどある」という感覚に陥っても、1年もたてば大きく資産が減っていることに気づくでしょう。
また、無計画に使ってしまう人や、調子に乗って人に話してしまう人ほど、詐欺や悪意を引き寄せやすくなります。そして、いざ働きたいと思っても、年齢を重ねた後では、再就職の道は厳しいのが現実です。
Aさんのようにラッキーが舞い込んだら、まずは冷静になること。資産をどう使っていくのか、仕事を辞めるという選択が正しいのか、しっかりプランを立てた上で、慎重に行動するべきでしょう。
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