日本人の老後資産状況から見えてくる現実
「老後資金が足りない」という悩みは、多くの人にとって身近な不安です。しかしその一方で、「お金が余るかもしれない」という、まったく逆の悩みを抱える人もいます。
まずは、一般的な資産状況を見てみましょう。金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」によれば、金融資産を保有している世帯の平均資産額は、単身世帯で1,492万円、2人以上の世帯で1,758万円です。
ただし、これは「平均値」であり、資産が極端に多い世帯が数字を引き上げている可能性があります。 そこで参考になるのが「中央値」です。中央値は、単身世帯で500万円、2人以上世帯で715万円と、より一般的な家庭の実態を反映しています。
さらに、年齢別で見ると、50代の単身世帯の平均資産は2,288万円、中央値は555万円。同じく60代では平均2,240万円、中央値1,100万円、70代では平均2,104万円、中央値1,100万円となっています。
このデータを見ると、50代と70代にかけて保有資産の平均値はほとんど減っていません。中央値はむしろ増えています。
また、こんなデータもあります。内閣府「令和6年度年次経済財政報告」の「日本の年齢階層別の資産の保有状況」によると、家計金融資産は60-64歳までがピークで平均1,800万円強。しかし、85歳以上を見ても1,500万円強と、減少幅は1割半ば程度。
これらのデータからは「資産が減らない」という意外な事実が見えていきます。資産を残して子や孫に引き継ぎたい人もいれば、年齢を重ねて使い道がなくなってしまう人もいるでしょう。
ただし、もし独身で相続人がいない場合、その人の死後、残ったお金は最終的に国庫に納められることになります。そのため一層お金の使い道に悩むこともあるようです。Aさんの例を見ていきましょう。
