クラッシュは“戦略”か? トランプ政権が狙う金融再編
私は別の見方をしている。トランプの任期4年間のなかで景気後退が起きるとするなら、トランプとしては大統領就任直後に起きたほうがいいと考えるに違いない。2025年第2四半期あたりに起きれば、景気後退はバイデン政権のせいだと責任を押し付けられる。これが一年後なら、そうはいかない。
景気をクラッシュさせて、FRBに利下げさせられれば、トランプとしては一石二鳥となるのではないか。どのみちやって来るはずの景気後退を先に終わらせ、まずは政治的責任から逃れて、さらに7兆ドルのリファイナンスを行う。さらにそれを口実に新たな財政出動(ばらまき)ができるかもしれないのだから。
そこまでしたたかなマスタープランが描かれていれば、もう一度大きなバブルをつくり、トランプの任期が終わる頃には米国株が株高となる可能性がある。そうなれば、トランプの三期目が取り沙汰されるかもしれないし、たとえそれが実現しなくても、次期大統領にトランプの思想、意向を引き継がせることができ、念願のレガシーをつくることができるだろう。
最後にウォーレン・バフェットについて記しておきたい。
現在のバフェットは記録的なキャッシュ水準にあるのだが、このタイミングでわざわざ日本株を買いに来た。お気に入りの商社株を買い込んだ。
この選択はメイクセンスで、確かに関税に振り回されるご時勢において、日本の総合商社の役回りは増す。なぜか。一般的な独立エージェントには国際的取引を行うことが難しくなるからだ。日本の総合商社は資金豊富だし、専門性も豊富な経験もある。
ここにきてトランプ政治がもたらす悪影響は、米国に対するさらなる信頼度の“低下”ではないか。これまで米国に向かっていたグローバル資本が、トランプの悪しき振る舞いを契機にその他の国々に資金シフトされる可能性は否めない。
いずれにしても、これからは米国から資金が離れていく。そのトレンドは次第に強まるはずだ。
当然なのだ。なぜなら、米国債にせよ、その他の資産にせよ、米国が世界の警察を放棄したのであれば、それらを買う必要はなくなるからだ。
そうした意味において、トランプクラッシュは、起こるべくして起きたと言えよう。
エコノミスト
エミン・ユルマズ

