多くの企業が助成金を活用できていない理由
中小企業にとってメリットが多いにもかかわらず、多くの企業が助成金を活用できていません。助成金を申請して最大限に活用できている中小企業は、おそらく全体の1割程度ではないかと思います。
助成金の活用が難しい背景には、3つの壁があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
壁その1……労務管理ができていない
助成金を申請するにあたっては、労働基準法などの労働法令を正確に理解し、最低賃金や残業代、時間外労働の規則を守る必要があります。たとえば、
●最低賃⾦をクリアしている
●残業代を適切な計算⽅法で⽀払っている
●時間外労働の上限規則を守っている
●年5⽇の有給休暇を取得させている
●同⼀労働同⼀賃⾦に対応している
といった内容を順守していることが求められます。しかし、当たり前にやるべきことを多くの企業が知らないという理由で、これをクリアできない状況にあります。
それ以外に、役員以外の従業員を1人以上雇用していることや半年以内に会社都合の解雇をしていないことに該当する必要があります。
壁その2……選定ができない
助成金の要件は毎年変更されることがあり、予算が急になくなる場合もあります。このため、最新情報を常に把握しておく必要がありますが、これが意外に難しい。
助成金パンフレットは膨大なページ数があり、そこに記載されている小さな文字にも重要な情報が含まれています。専門用語も多く、内容を理解するのも大変です。そのため、必要な助成金を正しく選定するのは困難です。
壁その3……資料を作る時間がない
申請には膨大な書類を準備する必要があり、労働者名簿や賃金台帳、就業規則、雇用契約書、労使協定、出勤簿などを適切に整備しなければなりません。不備があると再提出を求められることも多く、その対応に多大な時間と労力を費やすことになります。
毎日の業務に追われて、こうした書類づくりにまで時間を割けない経営者がほとんどだと思います。
ほかにも、助成金を活用している場合、会社都合で従業員を解雇すると雇用関係の助成金が不支給となり、その前後6ヵ月間は助成金の申請ができなくなります。
また、一つの助成金に対して、平均して1年6ヵ月から2年間の運用管理が必要です。さらに、助成金の申請前に対象従業員が退職すると、助成金が申請できなくなります。このような事態を避けるため、従業員の管理が重要です。
こうした助成金のデメリットともいえる“壁”は、助成金に詳しい社会保険労務士に依頼することでほぼ解決できます。ですが、顧問社労士が助成金申請に不慣れだと、なかなか進まないのが実情です。
だからこそ、助成金申請を得意とする私に相談してほしいというのが本音ですが、私一人ではキャパシティに限界があります。一人でも多くの方に助成金のメリットを享受してもらうために、助成金に関するQ&Aを解説していきたいと思います。

