松井証券「信用取引」のやり方…手数料や金利、注文方法は？【初心者向け】

信用取引は、証券会社からお金や株式を借りて取引できるサービスで、自己資金よりも大きな金額の取引ができるのが特徴です。

 

本記事では、松井証券の信用取引に焦点を当て、

 

「松井証券の信用取引は他社と何が違うの？」

「松井証券で信用取引を始める方法は？」

「信用取引を始めるにはどのようなことに注意すればいいの？」

 

のような疑問を持っている人に、信用取引の基本から松井証券で信用取引を始めるメリットや始め方を中心に、初心者にもわかりやすく解説します。

 

「信用取引＝怖いもの」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、信用取引を活用すれば、株主優待の権利獲得後の株価下落を回避できるなどのメリットもあるので、ぜひこの記事を参考に理解を深めてください。

 

 

はじめに：信用取引とは？

 

信用取引とは、現金や株式を担保に証券会社からお金や株式を借り、手元にある資金以上の金額の株式を売買できる取引のことです。

 

イメージとしては、住宅ローンを借りるときに頭金500万円を支払い、銀行から5,000万円を借りて家を買うようなもの。レバレッジ（てこ）をかけることで、手元に5,000万円がなくても、預け入れた金額以上のお金を借りられます。

 

株式の信用取引も仕組みは同じで、証券会社に預けた現金（委託保証金）や株式の約3.3倍の金額までの株式を売買することができます。

 

また、現物取引の場合は「安く買って高く売る」ことで利益をあげるのが基本ですが、信用取引の「信用売り（空売り）」では「高く売って安く買う（買い戻す）」ことでも利益を狙えます。

 

 

このように、信用取引を活用することで、相場の下落局面でも利益を狙ったり、通常の現物取引と併用してリスクを抑えたり、株式の投資戦略の幅を広げられます。

 

ただし、信用取引は自己資金以上の金額の取引をすることになるので、利益が大きくなる可能性がある一方、そのぶん損失も大きくなるリスクがあることを忘れてはいけません。

 

委託保証金率の仕組みを理解することは特に重要で、相場が急変して委託保証金の維持率が20％を下回ると追証（追加保証金）が発生し、追加での保証金の入金を求められます。

 

 

信用取引の委託保証金率の最低維持率は30%のところが多く、いざというときに慌てないよう、信用取引を行う際はリアルタイムで委託保証金の維持率をチェックし、資金管理をしっかり行いましょう。

 

 

 

1. 松井証券の4種類の「信用取引」を比較

 

松井証券には信用取引が4種類あり、特徴を比較したのが次の表です。

 

■松井証券の4種類の「信用取引」の比較

 

松井証券に限らず、上場しているすべての銘柄で信用取引ができるわけではありません。特に信用売りの場合は、①制度信用取引を除き、証券会社が指定した銘柄のみ空売りできるケースがほとんどです。

 

松井証券の場合、信用取引に対応している銘柄かどうかは、信用取引の注文画面の「取引区分」で判別できます。グレー表示になっている信用取引の種類は選択できません。

 

 

なお、お客様サイトの「日本株」＞「売建可能銘柄一覧」の順にクリックすると、現在、松井証券で信用売りができる銘柄一覧を見ることができます。

 

 

売建可能銘柄一覧の画面では、（松井証券内での株券の）在庫状況や、貸株料などのコストを確認できます。

 

 

空売りを検討している銘柄がある場合は、事前にチェックしておきましょう。

 

 

 

2. 松井証券で「信用取引」を始めるメリット5つ

 

ここでは、松井証券で信用取引を始めるメリットを次の5つに絞って紹介します。

 

 

それぞれ解説します。

メリット①：1日の合計約定代金が50万円まで取引手数料無料

 

松井証券の信用取引の取引手数料は、1日の約定代金の合計金額で決まるボックスレート（定額料金）となっています。現物取引や信用取引を問わず、1日の約定代金の合計が50万円まで取引手数料が無料なのが特徴です。

 

さらに、松井証券なら、25歳以下（未成年を含む）は1日の約定代金に関係なく手数料無料で信用取引ができます。

 

■松井証券の「信用取引」の手数料

 

なお、SBI証券と楽天証券の信用取引の手数料は、電子交付や特定コースへの変更を条件に約定代金に関係なく無料となっています。

 

1日の約定代金合計が50万円を超える場合は、SBI証券や楽天証券のほうがコスト面では有利です。しかし、上場している銘柄の約90%は50万円以下で購入できるため、松井証券の信用取引が必ずしも不利というわけではありません。

 

メリット②：「一日信用取引」は取引手数料に加え、金利・貸株料が無料（当日決済）

 

松井証券の一日信用取引は、返済期限が当日のデイトレード専用の信用取引です。約定代金にかかわらず取引手数料が無料で、金利・貸株料もかかりません。

 

コストを気にせず同じ銘柄を一日に何度も取引できるので、松井証券の一日信用取引はデイトレーダーに根強い人気があります。

 

ただし、当日中に決済できなかったポジションは松井証券側で決済され、1注文あたり3,250円（税込3,575円）の手数料がかかります。また、新興市場の人気銘柄が対象の「プレミアム空売り」をする場合は、プレミアム空売り料が発生するので、一日信用取引でも手数料が完全無料というわけではありません。

 

なお、松井証券で口座開設をすると、次のような独自のランキングを見ることができ、デイトレ向きの銘柄を探すことができます。

 

• 寄り前気配　値上り率／値下り率ランキング：前日から大きく窓を空けて寄り付きそうな銘柄
• デイトレ適性ランキング：値幅が大きく、流動性が高い銘柄
• Tick回数ランキング：Tick回数（約定回数）が多い銘柄

 

このように、松井証券にはデイトレードをする環境が整っており、これからデイトレードに挑戦しようと考えている人だけではなく、すでに他社でデイトレードをしている人にもおすすめです。
 

 

メリット③：「優待クロス注文」は現物買いと信用売りの同時発注が可能

 

株主優待の権利を獲得すると、翌日に株価が下落するのが一般的です。

 

しかし、現物取引の「買い」と信用取引の「売り」を同時に行うクロス取引をすると、株主優待を取得しつつ、権利落ち後の株価下落リスクを最小限に抑えることができます（＝「優待取りのつなぎ売り」）。

 

 

松井証券には「優待クロス注文」機能があり、株主優待を獲得するために行う現物買いと信用売りを一度の操作で同時に発注できるのが特徴です。

 

ただし、株主優待を実施しているすべての銘柄が信用売りに対応しているわけではなく、優待クロス注文に対応している銘柄も限られます。また、逆日歩のコストが発生する場合もあるので注意が必要です。

 

・「優待クロス注文」のやり方

優待クロス注文は、お客様サイトの「日本株」＞「優待クロス」から探すことができます。

 

 

優待クロス銘柄は、優待確定月など様々な条件でフィルタリングができます（ここでは優待確定月「7月」で絞り込み）。「検索」をクリックすると、銘柄一覧が表示されます。

 

 

優待クロス注文ができる銘柄には、「クロス注文」と記載があります。ここでは、飲料メーカーの「ダイドーグループホールディングス（銘柄コード：2590）」の銘柄名をクリックします。

 

 

次のような注文画面が表示されるので、ここで「優待クロス」ボタンをクリックしましょう。

 

 

すると、優待クロス注文の注文画面が表示されるので、必要項目を入力して発注してください。

 

 

メリット④：「貸株サービス」と併用できる

 

松井証券では、信用取引の担保として預けている現物取引で購入した株式（代用有価証券）を、そのまま貸株サービスに利用することができます。貸株サービスとは、信用取引の貸借対象銘柄を松井証券に貸し付けることで貸株金利を受け取れるサービスのことです。

 

他社の場合、信用取引と貸株サービスの併用ができても、代用有価証券を貸株に出せないケースがほとんどです。

 

ただし、松井証券の信用取引なら、信用取引に必要な担保を確保しながら貸株金利を得ることができ、資産効率を最大化できます。

 

メリット⑤：信用評価損益率から相場の底や天井の目安がわかる

 

松井証券で総合口座を開設をすると、松井証券で信用取引をしている人だけの信用評価損益率を当日の18時ごろに見ることができます。

 

この信用評価損益率は、信用取引をしている投資家がどれくらい含み損益を抱えているかをパーセンテージで表した指標で、市場全体（日経平均）の相場の天井・底を探るバロメーターとされています。

 

二市場（東証・名証）における全証券会社の信用評価損益率は金曜日時点のデータが翌週に公表されますが、松井証券の信用評価損益率は全体の先行指標として知られています。

 

この信用評価損益率（買い）は概ね0%〜-20%で推移しており、判断の目安は次のようになっています。

 

• 0%付近：天井圏の目安
• -20%前後：底入れの目安

 

0%や-20%に達してすぐに反転するわけではありませんが、警戒しておくと相場変動に備える心の余裕が生まれます。

 

結果論ですが、2025年4月7日に日経平均が前日比2,644円安の31,136.58円を記録した日の夜に発表された松井証券の信用評価損益率（買い）は-23%超を記録し、翌日から株価が反転しました。

 

4月7日の夜に松井証券の信用評価損益率（買い）を確認して「そろそろ底かな」と判断していれば、松井証券のPTS取引（夜間取引）で安く買えた可能性があります。

 

なお、松井証券の信用取引口座を開設すると、松井証券で信用取引をしている人だけのグロース銘柄の信用評価損益率と売買代金ランキングを見ることができます。新興市場の銘柄を中心に取引をしている人は参考にしてください。

 

 

 

3. 松井証券で「信用取引口座」を開設する方法

 

松井証券で信用取引を始めるには、株式等を売買する「総合口座」とは別に「信用取引口座」を開設する必要があります。総合口座との同時申し込みや、信用取引口座だけの申し込みはできません。

 

また、信用取引口座を開設するには、証券会社の審査に通過する必要があります。

 

本章では、松井証券で信用取引口座を開設する手順を、以下の7ステップで紹介します。

 

営業日の15時までに申し込んで審査に通過すれば、その日の18時には信用取引口座の開設が完了します。

 

 

順番に解説します。筆者はすでに松井証券の信用取引口座を開設済みだったので、公式サイトの画像を引用して補足します。

STEP1：信用取引口座の開設を申し込む

松井証券のお客様サイトにPCでログイン後、各種口座開設状況より信用取引の「開設」ボタンをクリックします。

 

 

続いて、各種口座開設状況の「信用取引口座」の「開設する」をクリックしてください。

 

 

なお、年齢などの信用取引口座の開設基準を満たしていないことが明らかな場合は、「開設する」ボタンが表示されないこともあります。

STEP2：口座申込受付基準と登録情報を確認する

信用取引口座の申込受付基準および口座維持基準が表示されたら一読し、「次へ」をクリックします。

 

 

続いて、総合口座の申し込みをしたときの登録情報を確認します。変更がなければ「申込する」に進みましょう。

 

 

STEP3：電子開設を承諾する

信用取引口座の開設にあたり、各種書面を紙面ではなくWEB上で電子交付して確認することを承諾する場合は、「承諾する」をクリックします。

 

 

STEP4：信用取引口座の開設に必要な書面を確認する

信用取引口座の開設に必要な各書面を開いて一読したらチェックボックスにチェックを入れ、「次へ」に進みます。

 

 

そして、「包括再担保契約に基づく担保同意書」を一読してチェックボックスにチェックを入れ、「同意する」をクリックします。

 

 

STEP5：申込審査の質問事項に回答する

続いて、「信用取引口座開設申込審査」の質問に回答します。自分の大切な資産に関わる内容なので、正直に回答しましょう。

 

 

質問にすべて回答したら、チェックボックスにチェックを入れ、「次へ」をクリックします。

 

STEP6：取引経験を入力し、確認して申し込む

続いて、以下の3商品の取引経験と投資目的を入力します。

 

• 現物取引
• (他社での)信用取引
• 先物・オプション取引経験

 

 

経験年数は自己申告制で、取引履歴の提出などを求められることはありませんが、正直に回答しましょう。

 

入力したら「確認する」に進み、内容を確認したら「申込する」に進みます。

 

 

 

STEP7：約諾書を承諾する

信用取引口座約諾書の内容を一読し、取引暗証番号を入力して「承諾する」をクリックしましょう。

 

 

原則、営業日の15時までに申し込みをすると、同営業日中に松井証券側で審査が始まります。

 

審査に通過すれば、その日の18時以降に各種口座開設状況の「信用取引口座」の状態が「開設済」に変わります。

 

 

以上で、松井証券で信用取引を始める準備が整いました。

 

 

 

4. 松井証券の「信用取引」の注文方法（新規の信用買い）

 

松井証券の信用取引口座を開設できたら、実際に注文してみましょう。

 

ここでは、「日経レバレッジETF（銘柄コード：1570）」を10株、一日信用取引で「信用買い」の注文を出す方法を紹介します。手順は次の5ステップ。

 

 

順番に解説します。

STEP1：ログインする

松井証券のお客様サイトにPCでログインします。ログイン時は、「電話番号認証」が必須です。

 

なお、松井証券の信用取引は、お客様サイト以外にも以下のツール・チャネルで注文できます。

 

• ネットストック・ハイスピード（PC専用ツール）
• 日本株アプリ（スマホ）
• 株touch（スマホ・旧アプリ）

 

目的や利用する場所に応じて使い分けましょう。注文の流れは同じです。

 

STEP2：「信用新規」メニューを開く

ここではシンプルな注文方法を紹介します。上の「日本株」メニューから「信用新規」に進んでください。

 

 

STEP3：売買する銘柄を探す

売買する銘柄を表示する方法はいくつかありますが、今回は銘柄コードを直接入力します。銘柄コードがわからない場合は、銘柄名の一部を入力して候補銘柄一覧から探すことも可能です。

 

取引する銘柄は「日経レバレッジETF（銘柄コード：1570）」なので、検索窓に「1570」と入力し、「検索」をクリックしてください。

 

 

STEP4：信用新規注文内容を入力する

「信用新規注文入力」の画面が表示されたら、注文内容を入力していきましょう。

 

 

「取引区分」では、4種類の信用取引から選ぶことができます（グレー表示の信用取引は選択不可）。

 

今回は当日中に反対売買を行うため、一日信用取引の「新規買（一日）」を選びます。あとは現物取引の注文と同じように、株数や値段などを入力してください。

 

すべて入力したら、「注文する」をクリックします。

 

STEP5：取引暗証番号を入力し、「注文する」をクリック

入力した注文内容が表示されるので、慎重に確認してください。

 

最後に取引暗証番号を入力し、「注文する」をクリックしましょう。

 

 

「株式注文照会」をクリックすると、注文状況を確認できます。今回は、すぐに25,940円で10株約定できました。

 

 

これで、信用取引の新規の信用買いの注文は完了です。

 

5. 松井証券の「信用取引」の注文方法（返済売り）

 

信用取引で新規の信用買いができたら、今度は反対売買の返済売りの注文を出す方法を紹介します。

 

 

順番に解説します。

STEP1：ログインする

松井証券のお客様サイトにPCでログインしましょう。

 

STEP2：「信用返済（建玉照会）」をクリック

建玉（未決済の信用取引のポジション）を見るには、「日本株」メニューから「信用返済（建玉照会）」に進みます。

 

 

STEP3：返済する建玉を選択する

「信用建玉照会」の画面で、返済する建玉の「返済」ボタンを選択します（ここでは「日経レバ」）。

 

 

STEP4：信用返済注文内容を入力する

「信用返済注文入力」の画面で、注文内容を入力していきましょう。返済株数、値段などを入力します。

 

 

すべて入力したら、「注文する」をクリックします。

 

STEP5：取引暗証番号を入力し、「注文する」をクリック

入力した注文内容を確認後、取引暗証番号を入力し、「注文する」をクリックしましょう。

 

 

「株式注文照会」をクリックすると、注文状況を確認できます。

 

 

今回は25,965円で10株約定し、250円の利益（＝値上がり幅25円×10株）となりました。

 

 

6. よくある質問

 

最後に、松井証券の信用取引に関するよくある質問に7個回答します。

Q1. 松井証券の信用取引口座の審査基準は？

松井証券で信用取引口座を開設するには、以下のような審査基準があります。

Q2. 審査に落ちたら信用取引口座はもう開設できないのですか？

審査基準に引っかかった項目が解消できれば、再申し込みは可能です。ただし、虚偽の申請はやめましょう。

 

Q3. 松井証券で信用取引をするには保証金はいくら必要ですか？

松井証券の信用取引は、最低30万円の委託保証金が必要です。

 

委託保証金率は約定代金の30%以上なので、30万円の保証金があれば、約3.3倍の100万円分の信用取引が可能です。

 

委託保証金率が20%を下回ると追証が発生するので、相場急変時は余裕を持って入金するなど、委託保証金率は30%以上を維持しましょう。

 

Q4. 松井証券のNISA口座でも信用取引はできますか？

松井証券に限らず、NISA口座では信用取引はできません。

 

 

Q5. 松井証券のPTS取引でも信用取引はできますか？

松井証券のPTS取引では、東証の取引時間中（9時～11時30分、12時30分～15時30分）のみ信用取引ができます。

 

ただし、ナイトタイム・セッション（17時～翌2時）は信用取引ができません。

 

 

Q6. 信用取引で買った銘柄でも、配当金は受け取れますか？

信用取引で買った銘柄でも、現物取引で買ったときの配当金相当額を受け取れます。

 

ただし、信用売りをしているときに権利確定日をまたぐと逆に配当金を支払うことになるので、注意しましょう。

 

Q7. 信用取引で株式を買っても、株主優待はもらえますか？

信用取引で株式を買っても株主優待はもらえません。株主優待の権利を獲得するには株主名簿に自分の名前が記載される必要があり、信用取引で買った株式の名義は証券会社となります。

 

ただし、信用取引で買った株式を「現引き」（現物株として引き取る手続き）し、権利付最終売買日までに現物株式として保有すれば、株主優待を受け取ることができます。

 

7. まとめ

（松井証券公式YouTubeチャンネル『信用取引でダメ、ゼッタイ！なこと　 マヂカルラブリーと学ぶ　松井証券　資産運用！学べるラブリーSeason7 ～信用取引編～#1』）

 

この記事では、信用取引の基本と松井証券で始める方法を中心に解説しました。

 

最後にこの記事のポイントを整理します。

 

 

松井証券は電話や有人チャットなどによるサポート体制が充実しており、信用取引を始めた際にわからないことがあっても、気軽に質問をして疑問を解消することができます。

 

本記事を参考にして松井証券で信用取引を始めて、投資戦略の幅を広げましょう。