自分に矢印を向けて初めて見えてきた「落ち度」
ペンギンの群れの中から、天敵が潜んでいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛び込む1羽のペンギンになぞらえて「ファーストペンギン」ともいわれますが、リスクを恐れず勇気をもって一歩を踏み出すことで事態が少しずつ好転するのです。その一歩を踏み出すのがリーダーとしての役割です。
トラブルの中にまず自分が身を投じ、解決する。そのことで周りが信頼し、付いてきてくれる。そしてチームの力が強くなり、結果が付いてきて、業績の向上や社内表彰などで報われる。その成功体験を積み重ねることができたことは、間違いなく今日の私の財産になっています。
また、Z営業所の課長時代に30ページにわたるマニュアルを作成したように、人材育成のメソッドやマネジメントの手法、仕事の成功法則といったノウハウを体系化し、形にできたことも、間違いなくA運輸での12年間で得られた財産です。これらのノウハウは、現在のGラインの経営理念やミッション・ビジョン・バリュー、人材育成プログラムのほぼ原形になっています。その意味でも、このA運輸での12年間がのちの経営者としての礎を築いてくれたことは揺るぎない事実です。
一方で、最後にあのような形で部下から内部告発を受け、上司から一方的な降格を言い渡され、失意のまま退職を選択した事実、弁明の機会も与えられずに2階級の降格を一方的に言い渡され、給料も半分に下げられました。私が人生を懸けてきたA運輸とは、そんな横暴な人事を平気でやる会社だったのか、という悔しい気持ちは当然あります。誰よりもA運輸が好きで、宅配業界ナンバーワンの会社にしたいとの思いが強かったからこそ、当時の失望は計り知れないものがありました。
ただ、自分自身に矢印を向けて考えてみると、自分にも落ち度はありました。部下の思いや職場の人間関係への配慮を欠いたまま、一方的に自分の考えややり方を強引に押し付けようとしたところはあったでしょう。最短距離で目的を達成したいというせっかちな性格は海上自衛隊時代にも周囲との軋轢(あつれき)を生みましたが、ここでも最終的に周囲の恨みを買い、足をすくわれる格好となったのです。
でも、正直にいうとこの時点では「自分にも落ち度はある」という自覚はありながらも、本音のところでは「上司との巡り合わせが悪かった」「部下が指示どおりに動いてくれなかった」という、相手に原因を求める意識のほうがまだ強かったように思います。
まずは自分自身を変えなければいけない。私が本当の意味でそのことに気づくのは、もう少し先のことになります。
荒牧 敬雄
Gライン株式会社 代表取締役
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