「粗大ゴミ」のデータからわかる、日本人の生活実態…「耐久消費財の買い替え需要」と「景気の波」の深い関わり

「粗大ゴミ」のデータからわかる、日本人の生活実態…「耐久消費財の買い替え需要」と「景気の波」の深い関わり

約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は、粗大ゴミのデータと景気の推移について解説します。

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粗大ゴミ、リーマン・ショック後に大きなプラスの山が出現

1作業日あたりの粗大ゴミ(東京23区清掃一部事務組合)の前年同月比の推移をみると、戦後1番長かった「いざなみ景気」の景気局面の終盤の2006年~2007年にプラスの山がある。その後2008年のリーマン・ショックの後に2009年~2011年にかけて大きなプラスの山がある。

 

粗大ゴミは、木製家具などの可燃系の粗大ゴミと自転車などの不燃系の粗大ゴミに選別されるが、耐久消費財の買い替え需要の動きを裏側から見る手段として有用だろう。

 

2008年リーマン・ショックの景気後退への対策として、麻生内閣は10月30日に住宅ローン減税の拡充などの新総合経済対策を発表した。また、2009年度補正予算での経済・景気対策の1つとして「家電エコポイント事業」(エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業)が行われた。「家電エコポイント事業」は民主党政権に代わっても2011年にかけて実施され、2009年~2011年には、家電合計で約4,500万件、中でもカラーテレビは約3,200万件の申請があった。

 

当時は、住宅政策と「家電エコポイント事業」が相まって効果を発揮した可能性がある。2008年4月~2014年3月までの6年間の、1作業日あたりの粗大ゴミ(東京23区清掃一部事務組合)の前年同月比と、新設住宅着工床面積(半年前)の前年同月比のプラス・マイナスは概ね同方向で、両・前年同月比の相関係数も0.43とそこそこの数字だ。新しい新居に入った時、ベッドやソファーなどの家具や、家電などを新たに買い替えの動きが出て、その裏側として粗大ゴミが出た可能性があるだろう。

 

(出所)東京23区清掃協議会、国土交通省
[図表1]粗大ゴミと新設住宅着工床面積の前年同月比推移(2008年度~2013年度) (出所)東京23区清掃協議会、国土交通省

10年後も、同様の「山」が出現した納得の理由

2025年3月の「消費動向調査」によると、カラーテレビの平均使用年数は10.5年で、66.8%と約3分の2が故障による買い替えだ。電気洗濯機の平均使用年数は10.0年程度で、76.0%が故障による買い替えだ。

 

一般家庭や事務所から排出されたテレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機などの特定家庭用機器廃棄物は、「家電リサイクル法」により、有用な部品や材料がリサイクルされるが、再利用が難しいパーツは適切な方法で処分されるという。テレビを置く台として使用する家具なども粗大ゴミとなったであろう。

 

2009年~2011年にかけての粗大ゴミ・前年同月比の大きなプラス・前年同月比の山には「家電エコポイント事業」などの影響もあったと思われるが、10年後の2019年~2021年あたりにも粗大ゴミ・前年同月比の山がある。これには、2009年~2011年に購入した物に対する買い替え需要が出ていた面もあると思われる。

 

(出所)東京23区清掃一部事務組合
[図表2]1作業日あたり粗大ゴミの前年同月比 (出所)東京23区清掃一部事務組合

 

 

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか

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