MCI (軽度認知障害)から認知症へ
認知症の前段階と考えられるMCI(軽度認知障害)と診断されると、およそ5年で半数の人が認知症になるというのが通説です。しかし、適切な対応で14~44%の人が健常な状態に戻ることができるともいわれています。症状の進行はその後の介護生活にも大きく影響を及ぼすため、MCIの段階で家族が異変に気づき(早期発見)、対応(早期治療)することが、極めて重要なのです。さらに、認知症にも前兆、初期、中期、末期という段階があり、MCIを通り過ぎ、軽度認知症にも気づくことができず、約75%の人が中度認知症になってから診断を受けているというデータがあります。
認知症は、治らなくても早期発見・早期治療で適切な対応をすれば、進行を遅らせることが可能です。親自身が気づいていなかったり、気づいていたとしても認めなかったりする場合もあるため、子どもがその異変にいかに早く気づき、早く対応できるかが認知症介護を順調に行っていくためには大切なことです。
診察室でよく「認知症と物忘れの違いはなんですか?」という質問を親世代や、その介護を心配する子ども世代から受けます。その質問に対して、下記の【図表1】を基に説明を行っています。
ここから分かるのは、「忘れたことを忘れる」「記憶がごっそり抜け落ちる」といったような忘れ方をしていたら認知症を疑ったほうがいいということです。
また認知症になると、脳の細胞がなんらかの理由で破壊されたり、脳の働きが低下したりすることによって直接的に起こる「中核症状」と、本来の性格や本人を取り巻く状況などに影響して現れる「周辺症状」が見られるようになります【図表2】。
「中核症状」より引き起こされる「周辺症状」の例を挙げます。
・ 記憶障害や視空間認知障害、失認(中核症状)があるなかで外出をして、自分の家の場所を思い出せなくなった結果、徘徊(周辺症状)して家族が探し回る事態になってしまいました。
・ 見当識障害(中核症状)によって季節の感覚が分からなくなり、夏なのにセーターを着ていることを家族に注意されて、強い不安(周辺症状)から抑うつ状態になってしまいました。
「周辺症状」は本人の性格や生活環境の影響で出現することが多いため、症状の出方には個人差があります。ただ、周りの人が正しく認知症を理解し、環境を整えることや、リハビリや適切な接し方で改善される場合があります。
例えば、徘徊の周辺症状に家族が悩まされていたとしたら、いつも持って歩くカバンにキーホルダー型のGPSをつけたり、最近では靴の中に入れることができる小型のGPSも登場したりしているので、そういったものを上手に活用したりすることを考えてみるとよいと思います。散歩が趣味だったような人を危険だからと家に閉じ込めて自由を制限すると、それがストレスとなり違う周辺病状が現れて、より介護が大変になることがあります。認知症の介護が非常に難しいことは理解していますが、本人も介護する家族もストレスが少なく済む方法を見つけることが必要です。
嶋田 一郎
嶋田クリニック 院長
総合内科専門医
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