「老化による」物忘れと「認知症症状」による物忘れの違いは？「徘徊行動」に効果的な対策はあるか？知っておくべき＜認知症＞の特徴【専門医が解説】

認知症に対する正しい知識を

漠然と「認知症の介護は大変だ」というイメージを持っている人が非常に多いように感じるかもしれません。そんな不安を払拭するためにも「認知症」に対する正しい知識を持ってもらいたいと思っています。

私たちはひとくくりに「認知症」といいますが、「認知症」とは、さまざまな原因で脳の細胞が破壊されたり、脳の働きが悪くなったりすることで障害が起こり、生活に支障が出ている状態のことを指しています。よく間違えられますが、「認知症」というのは病名ではなく、いくつかの異なった原因で引き起こされる症状を総称したものです。

「認知症」を引き起こす病気は70種類以上あるとされ、なかでも4大認知症と呼ばれているものがあります。

認知症の原因の半数以上を占めているのが「アルツハイマー型認知症（アルツハイマー病）」です。脳の中にアミロイドβたんぱく質と呼ばれるものが蓄積し、脳の神経細胞の働きを悪化させ、神経細胞が死んでしまいます。また、「脳血管性認知症」は、脳血管の障害（脳卒中や慢性的な血流障害）から認知症に至る状態です。「レビー小体型認知症」は、レビー小体が神経細胞に蓄積して生じる病気で、物忘れのほかに、リアルな幻視、覚醒度・認知機能の変動、パーキンソン症状といった特徴的な症状が出現します。

さらに「前頭側頭葉変性症」は、初老期（65歳未満）に発症することが多く、大脳皮質の中で前頭葉や側頭葉を中心に萎縮が見られる病態です。物忘れよりも、自発性や関心の低下、言語障害、行動の変化などが目立つようになります。

認知症（特にアルツハイマー型認知症）は、前ぶれなく発症して、突然付きっきりの介護が必要になるようなことはありません。本人や家族が知らぬ間に徐々に脳の細胞が破壊され、脳の働きが悪くなっていきます。その早い段階で異変に気づくことができれば、進行を遅らせる薬の服用や適切なサポートにより、これまでどおりの生活をできる限り続けることが可能です。