日本の労働生産性「主要先進7ヵ国」最下位、約55年間キープ。考えられる、いくつかの要因【専門家が解説】

日本の労働生産性「主要先進7ヵ国」最下位、約55年間キープ。考えられる、いくつかの要因【専門家が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

世界的に労働生産性が低いといわれる日本。本記事では、梅本哲氏の著書『増補改訂版 サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集し考えられる原因について解説します。

生産性の低下は労働者の集中力・モチベーションの低下を招く

生産性が低下すると、業務完了までに長い時間がかかり、社員の集中力やモチベーションが低下してしまいます。その結果、業務の質(パフォーマンス)が落ちるだけでなく、残業手当の支給額が増えるなど、賃金コストの増加にもつながります。ほかにも、過度な残業や休日出勤が続くことによって社員が疲弊しやすくなり、企業として「稼ぐ力」が弱体化して十分な成果を上げられず、売上高・利益が低迷するといった弊害を引き起こしてしまいます。今後、生産年齢人口が急激に減っていくことを視野に入れれば、生産性の向上対策は早急に取り組むべき課題といえます。

日本の労働生産性が高まらない理由

なぜ日本の生産性が国際社会のなかで低水準にとどまっているのか、主な理由としては次の4点があるといわれています。

 

①付加価値を生みだす力が弱い

一つの業務に携わる人数が多くなったり、作業する時間が増えたりすれば付加価値は低くなってしまいます。米国やドイツといった工業先進国と比べると、同じ価値を生みだすために日本で投入される労働者数は多く労働時間は長いので、付加価値を生みだす力が弱く、結果として生産性が低くなっています。

 

②長時間労働という手法

日本には、長時間働き続ける人は勤勉であるという風潮が依然として残っています。近年、働き方改革の推進により残業時間の上限規制が設けられましたが、残業が前提の働き方をしている職場がまだ多く残されているのが実情です。社員の集中力は労働時間が長くなれば低下し、判断ミスや操作ミスを誘発します。結果的に時間あたりの作業量が低下したり、人的ミスによる作業の手戻りが頻発したりしやすい状況をつくっているのです。

 

③評価制度が適切ではない

日本の企業には年功序列の給与体系がいまだに残っており、成果主義に基づく評価制度を採用している企業が少ないのが現状です。例えば、勤続年数に応じて自動的に昇給していく仕組みになっていたり、労働時間が長いほど残業手当を多く受け取れる給与体系になっていたり、成果による評価ではない側面があります。こうした評価制度は「どんなに頑張っても評価は変わらない」という認識を社員にもたらし、モチベーションの低下を招きます。

 

④個人の裁量が小さい

役職者に決裁権が集中しており、社員個人の裁量が限られていることも生産性を低下させている一因です。「上司の判断を仰がなければ業務を進められない」「形式的な社内文書で公表されるまで実務に取りかかれない」といったケースが多ければ、必然的に仕事を進めるスピードは落ちます。また、チームで仕事を進めることが前提となっている場合、仕事が遅いメンバーのフォローに回るため、本来の業務に集中できない状況が生まれがちです。

 

 

梅本 哲
株式会社医療産業研究所
代表取締役

※本連載は、梅本哲氏の著書『増補改訂版 サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

増補改訂版 サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

梅本 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

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