生産性とは何か?
日本生産性本部は「生産性」を8つに分類しています。本稿では特に断りのない限り、一人あたりの労働生産性──就業者が一人で1年間に生みだす付加価値額を生産性と呼ぶことにします。つまり、会社が1年間に生みだした付加価値額を就業者数で割ったものが、本稿でいう生産性です。
一般的に「生産性」というと、1時間あたりにどれだけの成果物が生みだせるかをイメージする方が多いと思います。例えば「Aさんは1時間で3ページのドキュメントを作成でき、Bさんが2ページ作成できるとしたら、AさんはBさんの1.5倍の生産性がある」というような使い方です。これは「1時間あたりの物的生産性」に該当し、一般的にいわれる「生産効率」と同様の意味になります。
本稿でいう生産性はこれとは異なります。本稿でいう生産性(一人あたりの労働生産性)は、就労者一人あたりが生みだす付加価値額になるので、生産効率が悪くても時間をかければ達成できます。AさんとBさんの例でいえば(ドキュメント1ページあたりの付加価値は同じとして)、Aさんが残業なしで月に480ページのドキュメントを作成したとして、Bさんが80時間残業して同じく480ページのドキュメントを作成しても、同じ生産性ということになります。
日本の労働生産性「先進7ヵ国」最下位を約55年間維持
日本の労働生産性は海外諸国と比較して低水準にあります。公益財団法人日本生産性本部が発行している『労働生産性の国際比較2023』によると、2022年の日本の1時間あたりの労働生産性(就業1時間あたりの付加価値)は52.3ドルで、OECD加盟38カ国中30位となっています。
ちなみに、付加価値とは就業者が労働によって生みだした価値のことです。「付加価値額=売上高‒売上原価」という数式で表すことができます。
主要先進7カ国(米国・ドイツ・カナダ・フランス・英国・イタリア・日本)のなかでは最下位で、データが取得可能な1970年以来ずっと最下位が続いています。米国は89.8ドルなので、日本の労働生産性は米国の6割程度だということが分かります。
また、日本の一人あたりの労働生産性(就業者一人あたりの付加価値)についても、OECD加盟国で31位と低い順位を記録しています。バブル景気だった1990年の13位をピークに下降を続け、2022年は統計開始以来最も低い順位となりました。
日本の労働生産性が低いことに関して、日本ではサービス業や小売業など接客を伴う業務が、生産効率よりも丁寧・丁重を優先する傾向にあることが原因といわれ、それが平均値を引き下げていると考えられます。また、製造業の一人あたりの労働生産性をみると、2000年にはOECD加盟国のなかでも生産性がトップでしたが、2021年時点では18位まで後退しています。
全産業平均の順位よりも高くはなっていますが、製造業に限った場合でも、日本の生産性はほかの先進国と比べて低いというのが現実なのです。
