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実家売却までの経緯
実はAさんの母親には持病があり、Aさんには妹がいました。母親は、近年はひとりで生活をすることに不安を抱くようになっており、妹のBさんにそのことを相談していたのです。Bさんは母親とは別居し、家庭を持っていましたが、電話をしたり、時折実家に戻ってきたり、母親を支えていました。そんなBさんからの後押しもあり、実家を売却し、施設に入居したといいます。
各国を放浪し、実家にいるあいだも次の旅の情報収集や自分のために買い物に出ることしか関心をもっていなかったAさんは、母親の体調の変化も妹が度々帰省していたことも、まったく知りませんでした。
「もうこれ以上は無理なのよ。まだ働けるんだから働きなさい」
「そんな……! 僕はこれからどこで風呂に入って寝ればいいんだ……」
自由を謳歌していたAさんの生活は、急転直下、ネットカフェで寝泊まりする生活に変わりました。
「8050問題」の進化版…“ひきこもらない”の落とし穴
一般に8050問題といえば、「家にこもる無職の中高年」としてイメージされます。しかし、子が必ずしも「ひきこもり」であるとは限らないケースもあるようです。定職はなくとも、親に生活を依存。旅行や趣味、推し活などに精を出し、ある意味で“ひきこもっていない”といったケースです。
今回のAさんも、ひきこもらない親依存のケースでした。こういったケースでは問題を認識しながらも、親との共依存となっているケースもあり、短絡的な思考に陥りやすく、終止符を打つことは必ずしも容易ではありません。
一見恵まれた環境にあり、表面化しにくいため見落とされがちですが、親の資産がなくなった瞬間に一気に生活が立ち行かなくなるという点で、リスクは非常に高いといえます。
生活設計の視点から見るリスク─年金生活と親子依存の限界
「親への依存」にはリスクがあります。まず、親の年金に頼るリスクです。老後に受け取る年金の支給額は本人の老後生活を支えることを想定しており、「配偶者ではない家族」を養うということは想定されていません。
親が自宅を売却する、介護が必要になる、医療費がかさむといったことが起これば、子への支援は終わる可能性があります。
また、子ども側の自立への動機が弱まり、人生経験を積みにくいというリスクもあります。「なん歳になっても自分は親に頼れる」と思い込んでしまうことで、キャリアやスキルを磨く機会を自ら遠ざけてしまいます。
親が亡くなったあとの生活設計がなにもなされていないことも問題です。相続でなんとかなると考えていても、親が心変わりしたり、自身で相続財産を上回る負債を抱えてしまったり、すでに取り崩せる資産が使われている可能性もあります。

