会社員の過酷さに絶望→12年後、早期退職実現
田中和人さん(仮名)は、新卒から12年間勤めた会社を退職。同世代ではかなりの水準といえる、約5,000万円という資産を築き、念願の早期退職を決意しました。
田中さんは私立大学を卒業後、都内の中規模IT企業に就職。初年度の年収は320万円足らずでした。当時は電話応対もままならず、週5日・1日8時間を超える労働に心身ともに疲弊。帰宅したらばったりとベッドに倒れこみ、土日は寝るだけ。「こんな生活を、65歳まで続けるのか、嘘だろ?」絶望したといいます。
そんな中で、30歳ぐらいまでに会社を辞めて1~2年ぐらい自由に暮らしたい。人生にそんな余白を持ってもいいじゃないか。そう考えたという田中さん。そのためには、何はなくともお金を貯めなければなりません。
「一度やると決めたら極端なほう」だという田中さんは、目標を決めるやいなや、まず、月8万円で借りた部屋から、3万円の狭小アパートへ引っ越しました。
食事は安い鶏むね肉ともやし中心、職場には手作りのおにぎりとお茶を持参で、食費は月1万円以下。飲み会も「体調を崩す」と断って極力回避。洋服はすべてリサイクルショップ、髪は自分で切り、お金のかかる娯楽は極力避けました。
「ルールを決めてしまえば守るだけ。目標があるから苦にならなかった」と田中さんは振り返ります。少し意識を変えるだけで、お金の貯まり方は大きく変わりました。家計簿アプリで出費を徹底管理し、1円も使わない「ノーマネーデー」を増やすことが日々の楽しみにもなっていきました。
節約を極めながら、銀行の残高が増えていくのを日課として見守るようになった田中さん。ある程度の貯金が貯まったタイミングで、投資もスタート。節約して手元に残ったお金をすべて投入しました。
そんな田中さん、途中で目標を変更したといいます。
「最初は30歳でちょっと休む程度と思っていたんですけど、かなりお金が貯まるスピードが速くて。会社も業績がよくて、年収が順調に上がったし、相場が良かったのも幸運でした。それで、どうせなら1~2年の休みじゃなくてFIREしたいなと。FIREブームに乗った感じもありますが(笑)、完全に仕事をしないのは厳しいかもしれないので、投資の運用益とアルバイトでやっていきたい。そう思いました」
こうして、入社から12年後には資産5,000万円を突破。節約生活もすっかり板につき、月15万円もあれば余裕を持って生活できると確信しました。
5,000万円を年利5%で運用すれば、年間250万円の収入になります。3%の場合は150万円、税引きではもっと減りますが、いずれにしても月数万円程度の軽い労働収入があれば、生きていけそう。そう確信した田中さんは、会社を辞める決断をしました。
「新卒の頃に感じた“65歳まで働き続ける絶望”から、ようやく解放された気がしました」
ところが、夢に見たFIRE生活は、意外な形で終わりを告げることになります。
