“おじいさん化”した先輩を見て、仕事続行を決断
地方の中堅企業で働いていた加納義男さん(仮名)は、60歳までは営業部長を務め、60歳以降は継続雇用に。65歳で長い会社員人生の幕を閉じる予定でした。
現役時代は一貫して成績優秀、人望が厚かった加納さん。60歳以降はピーク時に比べて年収が大幅に下がりましたが、それでも64歳時の年収は670万円ほど。同年代から見れば羨ましいほどの高収入でした。
元々65歳で完全にリタイアするつもりだった加納さんが、その考えを変えたのは、3歳年上で一足先に退職した先輩と久々に会ったことがきっかけです。退職時には“おじさん”だった先輩が、わずか3年ほどで“おじいさん”のような雰囲気になっていたのです。
「仕事を辞めると楽だよ。でも、きっちり生活する必要がないから、一気に気が抜けて老けちゃってね。困るよ」そう笑う先輩。仕事のストレスから解放されて幸せそうではありましたが、加納さんは、そんな生活はもう少し先でいい。そう考えたといいます。
65歳以降の再就職先を探すのは意外と簡単でした。同僚やクライアントとの会話で「まだまだ仕事をしたい気持ちはあるんだけどね」とさりげなく仕事への意欲を伝えると、数人から詳しく話をしたいと声をかけられたのです。
最終的に決めたのは、長年やりとりがあったクライアント先。仕事は週5日×8時間が基本です。年収は下がりますが、65歳で年金受給も同時に始まるので十分だと考えた加納さん。
「お金は重要じゃないんです。働かせてもらえてありがたいですし、人生最後の奉公という気持ちで頑張ります」……先方に笑顔で伝え、新しい生活をスタートしたのでした。
ところが、しばらくしてその会話を後悔するようになった加納さん。ある日、日本年金機構から届いた「年金の一部停止」の通知が原因でした。
