そんなバカな、日本では評価額「0円」⁉キングオブポップ「マイケル・ジャクソン」の肖像権、アメリカではどうなる?

そんなバカな、日本では評価額「0円」⁉キングオブポップ「マイケル・ジャクソン」の肖像権、アメリカではどうなる?
(画像はイメージです/PIXTA)

アメリカには税務専門の裁判所(Tax Court)が存在します。税金に関するトラブルが発生した際、税の分野に精通した専門家たちによって審理されるというのは、日本にはない文化です。なぜこのような機関が必要なのでしょうか? マイケル・ジャクソンの遺産に関する裁判を通じて、日本とアメリカの考え方の違いを見ていきましょう。カリフォルニア州にオフィスを構える国際税務のプロフェッショナルが解説します。

IRS敗訴へ…大きく差が出たのはやはり「肖像権」

今回の裁判において問題になったのは以下の3点の財産評価でした。

 

・MJの肖像権の財産評価

・MJが保有するSONY/ATVの持ち分の財産評価

・MJが保有するミュージシャンの著作権をまとめた Mijac Musicの財産評価

 

それぞれ、申告書、IRS の税務調査時点、MJ側、IRSの裁判時点の評価額をまとめると次のようになります。

 

(1)MJの肖像権の財産評価

申告書:2,106ドル

IRSの税務調査時点:434,261,895ドル

MJ側:3,078,000ドル

IRSの裁判時点:161,307,195ドル

 

MJ側の評価額が申告書時点から大幅に上がっているのは、Sonyへの売却益を考慮したためです。MJ側の弁護士は死亡時の遺産としては考慮すべきでないと主張していました。これらを踏まえて裁判所が出した評価額は4,153,912ドル。MJ側よりおよそ100万ドル高く、IRSの税務調査時点よりおよそ4億ドル近く低い額で評価されました。

 

このことは肖像権の評価がいかに難しいかを示しています。同時に如何に弁護士の腕が重要であるかということもわかります。

 

(2)MJが保有するSONY/ATVの持ち分の財産評価

申告書:0ドル

IRSの税務調査時点 :469,005,086ドル

MJ側:0ドル

IRSの裁判時点:206,295,934ドル

 

結論、裁判所は0ドルであるという評価を下しています。この背景には生前のMJの金欠が影響しています。彼は豪華極まるライフスタイルを維持するために、多額の現金を使っていました。その影響でSONYに対して多額の負債を抱え関係は悪化していました。裁判所のこの判断は先の事由からMJ側に寄り添った形のあらわれです。

 

(3)MJが保有する(MJ自身も含めた)ミュージシャンの著作権をまとめた Mijac Musicの財産評価

申告書:2,207,351ドル

IRSの税務調査時点:58,478,593ドル

MJ側:2,267,316ドル

IRSの裁判時点:114,263,615ドル

 

裁判所はこれに対し107,313,561ドルとIRSに寄り添った評価しました。Mijac Musicには元々MJ以外にもレイ・チャールズやエルビス・プレスリー、アレサ・フランクリンなどの著作権が含まれており、このことをかなり高く評価したようです。

 

この裁判は「肖像権の評価を巡る」であり、このように判決が下されたのははじめてのことです。これだけ評価に差が出たことからもいかに評価が難しいのかがわかります。

 

IRS側が過小評価をしたとしてMJ側に支払いを求めていたペナルティも裁判所によって却下されています。

 

2021年には資金力、人材ともに枯渇しており大きく弱体化していたIRSですが、再度裁判を起こしたようです。どのような結果をもたらすのか注目が集まります。

日本だったら評価額は0円? 現行制度には問題がある

アメリカでは裁判を通じて評価の適正性が議論されましたが、日本では国税庁の「財産評価基本通達」に基づき評価が決定されます。現行制度では、肖像権のような資産は評価対象とならず、事実上「0円」とされる可能性が高いです。


今後、暗号資産などデジタル資産の価値評価がますます重要になっていくなか、日本の税制がこのままでよいのか疑問が残ります。今後の議論が求められるでしょう。


 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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