高齢者の生活自立と年金問題…厳しさ増す日本の現実
徹さんのように、家事未経験の高齢男性が配偶者を失ったあと、生活が困難になるケースは決して珍しくありません。
高齢単身世帯の増加
総務省のデータによると、2023年時点で全国の高齢者単身世帯は約855万世帯と、一人暮らしの高齢者が増え続けています。特に70代以上の男性は、家事経験が乏しいケースが多く、配偶者を失うと生活に困難を感じることが多いのです。
年金収入の現実
2024年度の公的年金の平均受給額は以下のとおりです。
国民年金(満額):6万8,000円
厚生年金(平均):男性 14万6,429円/女性 9万2,900円
妻が専業主婦で国民年金のみだった場合、夫婦の合計年金月額は約17万円(夫12万円+妻5万円)になります。
しかし、妻の死後、遺族年金は支給されないため、夫の収入は12万円に減少します。
この状況は、多くの高齢者が直面している現実です。特に、長年会社員として働き、「厚生年金があるから大丈夫」と考えていた人ほど、配偶者の年金収入がなくなったあとの生活の厳しさに直面する傾向があります。
1年半で急成長した父の生活力
南米から一時帰国した直樹さんは、父の生活を心配していました。母の死から1年半が経っています。実家を訪れた直樹さんは驚愕します。
手料理を振る舞う父
「おかえり」母が使っていた紺色のエプロンを身に着けた父が出迎えてくれました。「ちょうど洗濯物を取り込んでいたんだ」などというので、直樹さんは一瞬聞き間違いかと思いました。定年後、時間ができても母がせっせと家事をする横でぐうたらとソファに横たわっていた父の面影はありませんでした。
「日本食が恋しかっただろう」そういって父が夕飯に出してくれたのは親子丼。卵がとろりと半熟で、絶妙な火加減です。
直樹さんは小学生のころの記憶が蘇りました。母が高熱を出して寝込んだときのこと。いつも朝ごはんに目玉焼きを食べていたので、出勤前の父が代わりに目玉焼きを焼いてくれました。トーストされていない食パンの上に目玉焼き……のようなものがのっていたことを思い出しました。黄身が破れ、殻が入って食感はジャリジャリ、焦げていたので全然おいしくありませんでした。父が気まずそうな顔をしていたので、無言で朝ごはんを食べました。確かその日の夕飯は近所のお弁当でした。
そんな父です。そんな父がいまや、「ほら、これも食え」とおもむろに冷蔵庫から作り置きタッパーを取り出し、切り干し大根と塩昆布の和え物で夕飯を豊かにしてくれているのです。父が作り置きだなんて……。年を重ねていてもたった1年半でこれだけ人は変われるものかと、直樹さんは父に尊敬の眼差しを送りました。
注目のセミナー情報
【国内不動産】4月26日(土)開催
【反響多数!第2回】確定申告後こそ見直し時!
リアルなシミュレーションが明かす、わずか5年で1,200万円のキャッシュを残す
「短期」減価償却不動産の節税戦略
【資産運用】5月10日(土)開催
金価格が上昇を続ける今がチャンス!
「地金型コイン」で始める至極のゴールド投資