(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●強めの経済指標や日銀審議委員の発言で、日銀の早期利上げ観測が浮上、円高などの一因に。

●市場は日銀の追加利上げ時期を巡りかなり神経質な様子、ただ日銀の政策運営スタンスは不変。

●日銀は今後も慎重に緩和度合いを修正へ、それが可能な環境では利上げに過度な警戒は不要。

強めの経済指標や日銀審議委員の発言で、日銀の早期利上げ観測が浮上、円高などの一因に

市場ではこのところ、日銀の早期利上げ観測を背景に、円高や長期金利上昇の動きがみられ、これらが日経平均株価の上値をおさえる一因となっているように思われます。早期利上げ観測の高まりは、直近の予想比強めの経済指標に起因しており、2月5日発表の毎月勤労統計では、実質賃金の前年比の伸びが市場予想を上回り、17日発表の昨年10-12月期実質GDPは、前期比年率の伸びが市場予想を大幅に上回りました。

 

また、最近の日銀審議委員の発言も、材料視されたとみられます。田村直樹審議委員は2月6日、「政策金利を0.75%に引き上げたとしても、引き続き実質金利は大幅にマイナスであり、経済を引き締める水準にはまだ距離がある」と述べ、高田創審議委員は19日、「(経済・物価の)見通しが実現していけば、一段のギアシフトを進める局面だ」と発言し、市場では日銀が追加利上げに前向きとの受け止めが広がりました。

市場は日銀の追加利上げ時期を巡りかなり神経質な様子、ただ日銀の政策運営スタンスは不変

実際の市場の反応をみると、ドル円は2月25日に1ドル=148円57銭近辺までドル安・円高が進み、10年国債利回りは21日に1.45%を超えて上昇(図表1)、日経平均は26日に37,742円76銭の安値をつけました(いずれも取引時間中)。なお、日銀の植田和男総裁が21日、「長期金利が急激に上昇するような例外的な状況では、機動的に国債買い入れの増額を実施する」と述べると、10年国債利回りはその後大きく低下しました。

 

[図表1]日本の10年国債利回りの推移

 

このように、最近の市場はかなり慌ただしく、日銀の追加利上げ時期を巡り、かなり神経質になっている様子がうかがえます。ただ、日銀の基本的な政策運営のスタンスは、経済・物価情勢の展望(展望レポート)で示される経済・物価の見通しについて、それが実現していくとすれば、それに応じて追加利上げを行い、金融緩和の度合いを調整していくというもので、変わりはありません。

日銀は今後も慎重に緩和度合いを修正へ、それが可能な環境では利上げに過度な警戒は不要

1月の展望レポートでは、2026年度にかけて、消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率が2%の「物価安定の目標」に向けて落ち着いていく見方が示されています(図表2)。つまり、日銀は2026年度まで、経済を支えながら慎重に「金融緩和の度合い」を修正していく公算が大きく、前述の田村、高田両委員の発言も、基本的には日銀の政策スタンスに沿っており、また、日銀が1つ、2つの経済指標だけで利上げを急ぐことはないと思われます。

 

[図表2]展望レポートの経済・物価見通し

 

弊社は2025年7月と2026年1月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ利上げを行い、政策金利は日銀が中立金利(景気を熱しも冷ましもしない金利水準)の下限とみる1%に達したところで時間を置き、次の25bpの利上げは2027年1月と予想します。日銀の利上げは、「金融引き締め」よりも「極端な緩和の修正」の意味合いが強く、それができる現在の経済・物価環境を踏まれれば、利上げを過度に警戒する必要はないと考えます。

 

 

(2025年2月27日)

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『改めて「日銀の追加利上げ」について考える【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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