かつて、終末は平等だった
大正期(1912~26)生まれまでの日本人は、どうやって終末を迎えるかについて、心を煩わす必要はなかった。
第1の理由は、平均寿命が短かったことだ。このため、高齢者になったときの健康状態が重大な問題になることが少なかった。「介護などが必要になる前に寿命が尽きる」という場合が多かったと思われる。
第2の理由は、子供や孫たちと同居して暮らすのが普通だったことだ。仕事から引退したら、老後生活費は子供たちの世帯が面倒を見てくれる場合が多かった。体の調子が悪くなれば、家族が面倒を見てくれた。重い病気になれば病院に入ったが、退院できれば、家に戻って終末を迎えられた。
こうして、終末の迎え方について、大きな個人差はなかったのだ。仕事をしているときには社会的地位や貧富の差はあったが、終末は誰も平等、と言えた。
三世代世帯から、夫婦のみか単独世帯へ
ところが、日本人のこのような生活スタイルが、この数十年の間に大きく変わった。
第1に、平均寿命が延びたので、介護など高齢者の健康が大きな問題となった。重病になっても、医学の進歩で命が救える場合が多くなった。しかし、病気は治ったものの、事後に要介護状態になってしまうといったケースが増えたのだ。
第2の理由は、子たちが、成人して仕事に就くと、別居して独立の家計を営む場合が増えたことだ。この変化は、統計ではっきりと確かめることができる。令和4年版高齢社会白書(第1章第4節)によると、1980年においては、三世代世帯の割合が一番多く、全体の50.1%を占めていた。つまり、この頃の日本では、まだ伝統的な状況が残っていた。
しかし、2019年では、夫婦のみの世帯が32.3%、単独世帯が28.8%になっている。つまり、夫婦のみと単独で、61.1%と過半数になった。「三世代世帯から、夫婦のみか単独の世帯へ」という大きな変化が、この約40年の間に、はっきりと生じたのだ。
これは、全年齢階層についてのものだが、65歳以上の人々だけを取り上げても、世帯構造の大きな差が観測できる。すなわち、1人暮らしの比率が上昇しているのだ。
1980年には、65歳以上の人口に占める1人暮らしの割合は、男性4.3%、女性11.2%に過ぎなかった。しかし、この比率は、2020年には、男性15.0%、女性22.1%にまで上昇している。そして、2040年には、男性20.8%、女性24.5%になると推計されている(令和4年版高齢社会白書による)。かつて独居老人は例外的と言ってもよかったが、女性の約4分の1が、独居老人になるのだ。
東京都によると、都内の独居高齢世帯は、2020年に約92万だ。これは、世帯全体の12.7%にあたる(朝日新聞、2024年7月1日)。都の推計によれば、2040年には、世帯数で約119万と、世帯全体の15.8%になる。
日本は世界で初めての超高齢社会となったので、今後一体どのようなことになるのか、予想できない面が多い。
最近では、「高齢者等終身サポート事業」をめぐり、消費生活センターなどに寄せられる相談件数が増加しているという。これは、頼れる身寄りのいない高齢者らを対象にして、病院入院や介護施設入所時の身元保証や、葬儀や家財・遺品の整理などの死後事務などを担うサービスの民間の提供だ(※1)。さまざまなトラブルも発生しており、政府もガイドラインを策定した(※2)。
〈参考〉
※1(身寄りなき老後)終身サポート、相談急増 身元保証や死後事務行う事業者「高額契約」「信用できるか」、朝日新聞、2024年8月20日。
※2(身寄りなき老後)最期まで安心、買えるのか 高齢者向け「終身サポート」民間事業者が存在感、朝日新聞、2024年8月20日。
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