高年齢者雇用安定法の改正や年金の支給開始年齢の引き上げで、少なくとも65歳まで働くことが一般的になりました。しかし、60歳を過ぎて継続雇用になると、それまでと同じ条件で働くのは難しくなることがほとんど。「それなら転職したほうが……」そう考える人もいるかもしれませんが、うまくいくとは限らないようです。

転職しなければよかった…すぐに後悔したワケ

職場が変われば事態が好転すると思い込んでいた加藤さんですが、実際はそうではありませんでした。

 

前の会社で培った経験があるし、この会社とは長く付き合ってきたのだから大丈夫だろう。それは甘い考えだったと言わざるをえませんでした。新しい職場で一から人間関係を構築し、会社独自のルールを覚え、結果を出していくということは想像以上に難しかったのです。

 

長い経験を買われて転職したこともあり、受け入れる側の会社の目も厳しいもの。新卒からずっと同じ会社で働き転職経験のなかった加藤さんは、その厳しさを認識できていなかったのでした。

 

「前の会社に残っていればよかった」と、すぐに後悔するようになった加藤さんは、結局11ヵ月という短い期間で自ら退職することに。

 

その後、再就職をしようとハローワークにも行きましたが、どこも条件はがくっと悪くなります。「また失敗したら」という気持ちが出てしまっているのか、面接もうまくいきません。そうこうしているうちに、1年近くの時が流れていきました。

 

働かないでいるうちに、恐ろしいスピードで貯蓄は減っていきます。加藤さんの家の支出さは、住宅ローンの返済も含めてだいたい月30万円ほど。それに、健康保険や年金保険料などの支払い、突発的な支出もあるため、年間で400万円以上が出ていく計算です。

 

安泰だと思っていた老後も赤信号に。妻からのプレッシャーで家にも居場所がなく、「完全に判断を誤った、転職なんてしなければ」と後悔しきりだといいます。

60代以降の再就職は慎重に

高年齢者雇用安定法の改正や年金の支給開始年齢の引き上げで、少なくとも65歳まで働くことが一般的になりました。実際には70代まで働く人もめずらしくない時代ですが、働く条件がずっと同じかと言えばそうではありません。

 

2021年に実施されたパーソル総合研究所の調査によれば、定年後の再雇用では年収が下がった人が約9割。金額は平均44.3%減少するという結果になっています。

 

さらに約5割の人が、年収が半分以下になっているといいます。さらに、それまであった役職も外され、疎外感を感じることも少なくないようです。

 

だからといって、安易に別の会社に転職をと考えるのも危険です。一方で、加藤さんのように「新しい職場に行けば道が開ける」と思っても、そううまくいくとは限らないからです。


もちろん転職がうまくいき活躍できる人もいるでしょう。とはいえ、一度退職すればよほどでない限り元の会社に戻れることはありませんから、後悔することのないよう、とにかく慎重に行動したほうがよさそうです。

 

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